短編
□温もり
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冬が近づいてかなり冷え込んできた夜。
「う〜さっみぃ〜!!」
一人駆け足でアパートへ帰宅したナルトは風呂場へ直行し、急いで湯船に湯をはる。
今日の任務はヤマトとのツーマンセルで、夕方からの護衛任務だった。
木の葉へお忍びで来ていた大名を自宅まで護衛するというもの。
木の葉を発った時はまだ日も出ていたが、あっという間に日は沈み、帰宅するころにはかなり冷えてヤマトと二人スピードを上げての帰路になった。
砂埃がついた服をさっさと脱いで、風呂に浸かる。
「はぁ〜気持ちいい〜〜〜」
冷えた体もほかほか暖まってナルトが風呂場から出ると、窓が僅かに開いている。
(あれ・・・もしかして)
こんな時間にこんな場所から来る客は一人だけだ。
風呂上りでタオルを首にかけたままナルトは早足で窓へ歩み寄り、
「・・・せんせー?」
そっと声をかけてみる。
その姿を探してきょろきょろ辺りを見回すが姿がない。
気配もない。
(なーんだ・・・勘違いかよ)
がっかりする気持ちを抑えて窓をカラカラと閉める。
「今日は会えなかったな・・・」
ナルトは窓越しに輝く月を見上げてふと呟いた。
冬の月は空気が澄んでていつもよりくっきり見える。
その光は美しい銀色。
「カカシ先生・・・」
「呼んだー?」
突然、首にかけてあったタオルがふわっと頭にかけられる。
「うわっ!?」
「ちゃんと乾かしなさいね。風邪ひくでしょ」
そのまま後ろから大きな手がガシガシとナルトの頭をかき回す。
「カ・・・カカシ先生!?」
「んー?」
「い、いつからいたんだってばよ!」
「お前が風呂入ってるころかな」
「気配消すなってば!」
「俺の気配ぐらい読みなさいよ」
(う・・・これでも読んだっての・・・)
だが実際カカシの気配は並大抵の忍では感知できない。
木の葉のトップクラスですら難しいと言う。
特にナルトは感知能力には長けていないこともあり、毎回いきなり現れるカカシにドキドキしっぱなしだった。
「はい、乾いたよ」
「あ、ありがと・・・って何でここにカカシ先生がいんの?」
くるりとカカシの方を向くと、
「いやー寒くてね」
「は?」
「任務の帰りにココから暖かい気配を感じたからさ」
よく見るとカカシの忍服は任務後であることを物語っていて戦闘の名残が見て取れた。
さっき頭に触れてきた手もいつも優しく撫でてくれる時より冷たい。
(さっき風呂わかしてたからその熱かな?)
「ああ、風呂ならまだ湯が残って――・・・・」
「いや俺が言ってるのは」
そう言ってふわりとナルトを腕の中へ包み込んだ。
「コレ」
ドキンとナルトの胸が大きく鳴る。
「せ・・せんせ」
「やっぱりナルトは暖かいねぇ」
ナルトの鼓動はカカシとの近すぎる距離にどんどん早まっていった。