短編
□言葉で教えて
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「あれ?こうか?いやこうか」
「・・・・」
「あっ!また間違ったってば!」
「・・ほら、もっと指真っ直ぐにしてチャクラはこのぐらい。それじゃ多すぎだ」
「早くてよくわかんねぇ・・・・カカシ先生今のもっかいやってってば」
「だから――・・・」
今や日常となりつつあるカカシとナルトのやりとり。
それは任務の休憩中とか任務後とか時には休みの日すら見かけるほど。
「ナルトは本当に熱心ねー。寝ても覚めても修行ばっかり」
いつもの任務後。
ナルトはまた何かを練習していて、カカシがその隣で様子を見ている。
いつものその様子にサクラが呟く。
「いやー僕からしたらカカシ先輩があんなに根気よく付き合ってることが信じられないよ。以前の先輩からは想像できないな」
ヤマトも同じように2人を見て呟く。
「ヤマト隊長はカカシ先生のこと昔から知ってるんですよね」
「ああ。って言っても僕が知ってることなんてほんの一部分だろうけど・・・」
カカシは暗部時代、それはそれは有名だった。
その理由は強さだけではなく、敵に対して容赦なく決断を下すその冷徹さでも有名だった。
ついでに言えば女関係も。
そんなカカシに憧れる者は多数いた。
ヤマト自身も、その1人だ。
でもどれだけ尊敬されようと、カカシが誰かに何かを教えたりすることなどなかったのだ。
仲間としては接してくれるが、それ以上に親しくはせず皆と一定の距離を保っていたカカシが、ナルトにだけはその距離感が全く感じられない。
それだけでもけっこうすごいことなのに、
そんなカカシにつきっきりで指導を受けられるナルトが、ヤマトは少し羨ましかったりもする。
が、当の本人はそんなこと全然わかってない。
「よっしゃーっ!できたってば!」
「はい、よく出来ました」
満面の笑みでガッツポーズのナルトにカカシはその髪を撫でてやる。
「じゃ帰るぞ」
「おう!サクラちゃーん!隊長!またなー!」
「あ、ヤマト。報告書よろしく」
手を振って帰っていく2人を見て、サクラとヤマトは顔を見合わせた。
「いつも思うんですけど・・・・あの2人、家は別々の方向ですよね」
「だったと思うけど・・・」
毎回当たり前のように帰っていくのでつっこむ間もないのだが、いつも2人は一緒に帰る。
まるで同じ場所へ向かうかのような足取りで。
「「・・・」」
気にはなるものの、サクラもヤマトも深くは聞けずにそれぞれ帰路についた。
しかしヤマトはしばらく歩いてからハッと顔を上げる。
「・・・また報告書断れなかった・・・」
項垂れたまま、くるりと向きを変えて火影邸へと向かったのだった。