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□2012カカ誕前日話
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2012年 カカ誕祝で拍手文@



***



きっかけは、ささいなこと。

何でいつも遅刻するんだとか、野菜ばっか嫌だとか、子供扱いしないでとか。

そんな小さな心の不満を、我慢できなくて。

付き合い出して、これで何度目かのケンカ。

今回は何でだったかな……と思いなおしてナルトは部屋の窓から空を眺めた。

でももう思い出せない。

なんせ口をきかなくなったのは、もう2週間以上前だ。

そりゃ最初の3日ぐらいは腹も立っていたけど、

でもそれよりも会えないことの方が嫌で、カカシの部屋を訪れたのが会えなくなって1週間後。

しかし、その時にはカカシの部屋はもぬけのカラで。


『――……』


ナルトはそれ以来カカシの元へは行っていない。


(わかってる……任務は仕方ないことで、会えないのもいつものこと。こんなことで拗ねてたらまた子供扱いされるのに……)


感情の抑えがきかなくなったのは、いつからだっただろう。

行き場のない感情を手なずけるのは得意だったはずなのに。

そっと瞼を下ろせば、蘇る声に、触れてくる手の温かさに、どうしようもなく胸が締め付けられる。


(会いたい……カカシ先生……)


何でケンカしたのかはもう覚えてないけど、ちゃんとごめんって言おう。

それから、会いたかったって伝えて……

その先を思ってナルトは横になっていた体を起こした。


(もう帰ってきてるかも)


思い立ったらじっとできない性分だ。

すぐさまベッドから飛び降りて玄関の扉を開けた。


「ぅぷ!」


が、勢いよく飛び出すとすぐ人影にぶつかる。

鼻に固いものが当たって、痛みに目を眇めながらナルトは一歩下がった。


「テテ……すんません」


よく見ていなかったのでとりあえず謝る。

でも無反応な相手にまずかったかとナルトは顔を上げた。


「え……」


顔を上げた先には、銀色の髪と隻眼。

見慣れた緑色のベスト。


「ナルト……何でいるの?」


そう言うと、カカシはナルトの部屋を指す。


「え? え、と……」

「てっきり留守だと……」


会いに行こうと思った矢先、目の前に現れたその姿をナルトは半ば呆然と見上げる。

カカシも驚いているようだが。


「と、とりあえず……入ろうか」

「お、おっす……」


言われるがままに玄関を開け、バタンッと扉が閉まった音でナルトはハッと我に返る。


(そうだ謝らないと……!)


うっかり忘れそうになっていたが、カカシとはケンカしてそのままのはず。


「あの、カカシ先生オレ……!」


でも振り向きざまにふわりと抱きしめられて、再び言葉を失ってしまった。


「――ごめんな」

「え……?」

「大人気なく怒ったりして、ごめん」


言われて、ケンカした時のことを思い出す。

いつもは怒っても静かにそれを聞いて受け流すカカシが、今回は珍しく怒っていて……


“勝手にしろ!”


その時、怒鳴ったカカシを初めて見たのだ。

ケンカの原因は忘れても、その時のカカシの表情は忘れられなかった。


「会いたかったナルト……」


いつもの穏やかな声に、ずっと心の真ん中にあった重たい靄が薄れていく。


「先生……」


ナルトが呼べば、真綿のように柔らかかった抱擁が力強くなった。

屈むようにして抱きしめてくるカカシのうなじがすぐそこに見えて、息を吸えば懐かしさすら覚える匂いが胸の中に入ってくる。


「オレも……ごめんってば」


背中に手を回して、ナルトは素直にそう言った。

   
 
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