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□手当て―副作用編―
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ふと目を開けると、辺りは薄暗くなっていた。
窓から入る光はほんの少しで、それがぼんやり部屋の中を照らす。
うっすら見える壁も天井も見慣れないもので、目が覚めたばかりのオレは一瞬ここがどこかわからなくなった。
「あれ……オレ……」
顔を上げて周りをよーく見れば、見慣れないけど知った部屋だと気付く。
そうだ……オレ確かカカシ先生の家に……。
「……カカシせんせ?」
目の前のベッドにいたはずの姿がなくて、オレは先生を呼んだ。
声が思ったより小さくなったのは、先生が大怪我をしているから。
……だと思う。
立ち上がって室内を見回してみても、どこからも返事は聞こえてこない。
「カカシ先生」
もう一度呼んでみても、やっぱ返事はない。
(あんな怪我でどこに……)
うっかり一緒に寝ちまったけど、顔色の悪い先生と背中を大きく裂いた傷口を思い出して一気に不安が膨れ上がる。
「せん……っ!」
叫ぼうとした時、突然背後からふわりと腕が回された。
「ここにいるよ」
「え……」
それはカカシ先生の声。
たった今叫んで探そうと思っていた人の声だ。
なのにオレはすぐに振り向けなかった。
聞き慣れたはずのその声に、今まで聞いたことがない“なにか”を感じて。
それでも背後に立つ人物をチラリと見上げると、銀色の髪と閉じられた左目、それに縦に走った傷跡が見えた。
オレの体に腕を巻きつけているのは、やっぱりカカシ先生だ。
だけど何かいつもと違うような……。
雰囲気というか纏う空気というか……口布がないからか?
って言っても素顔をちゃんと見たのは今日が初めてだったんだけど。
カカシ先生の何も付いていない顔は驚くほど整っていて、うっかり見惚れたほどだ。
しかも笑うとまたすっげーかっこよくって。
男のオレでも正直ドキドキする。
だからなのかな。
こうして近くで見るとますます、なんか、心臓が……。
(ドキドキうるさいってば……!)
「せ、先生起きてちゃダメだってばよ。寝てないと傷が……」
「もう治った」
「はぁ?何言ってんだよ」
あの傷がそんなすぐ治るわけがない。
オレはカカシ先生をもう一度ベッドに寝かせようと、腕を引っ張った。
するとやけに大人しくベッドに座ったカカシ先生。
「まだじっとしてないと傷が――…」
そう言いかけた時、急に強い力で引っ張られる。
「え」
あっさりバランスを崩したオレはカカシ先生の腕の中へと倒れこんだ。
「ご、ごめっ……て、わっ」
急いで起き上がろうとしたところをまた引かれて、今度はそのままベッドへと転がってしまった。
それは受け身も取れない程の早業で。
先生はそこに余裕の笑顔で乗り上げてくる。
「カ、カカシ先生……?」
オレをしっかりと押さえ込むと、先生は優しく髪を撫でてきた。
耳のすぐ傍で、髪が流れる音がする。
(なんだってばよ……この体勢は……)
すぐ近くまで寄せられた顔と、触れてくる指先。
それに妖艶な笑みを浮かべた先生を前に、オレはどうすることもできない。
「ねぇナルト……」
「……」
呼ばれても、喉が張り付いたように声が出なかった。
だって、
だって……、
「クス……」
オレが固まっていると、カカシ先生は意味ありげに笑い、そしてこう言った。
「……オマエさ、俺のこと好きでしょ」