小話帳


□魂の記憶
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4・23


・カカシ18歳、ナルト4歳





俺には生まれつき左目に縦に走る傷痕がある。


それは医者が見ても不思議としか言えないような、到底生まれつきとは思えないもので。


まるで本当に怪我をしたかのような古びた傷痕だった。


成長に伴い徐々に薄くはなっていったが、消えることのないそれは今でも時たま疼くように左目を刺激する。


とはいえ視力には何の影響もなく、俺はすくすくと成長し、今年で18になった。


4月から大学に通うため家を出て一人暮らしを始めた俺は、新しい生活の中で1人の少年と出会う。





「うずまきなると!4さい!」





引っ越したアパートの隣の部屋に住んでいたその子は、金色の髪に青い瞳を持つ4歳の男の子。



その子を見た瞬間の衝撃をなんと言えばいいのか今でもわからない。



初めて会ったのだ。



それなのに、なぜか口をついて出た言葉は・・・・







「―――“逢いたかった”」







まるで何年も会っていなかったようなそんな気持ちになって、思わず自分で口を押さえてしまった。



何を言ってるんだ俺は・・・・





「・・・・」





どこかで会ったのなら、忘れるはずがないのだ。



こんな綺麗な髪で、澄んだ瞳を持って、真っ直ぐに見つめてくるその子を。



不思議に思いながらも、俺は順調に大学生活を送り始めた。





〜〜〜





ナルトはすぐに俺に懐いた。



大学が終わり真っ直ぐ帰宅すると、部屋の前で保育園から帰ったナルトが俺を待っていてくれる。



その笑顔を見るたびに、痛いぐらい胸が軋むのを感じて・・・・





「ただいまナルト・・・」





名を呼べば抱きしめたくなる。



なぜこんな気持ちになるのかわからない。



でも間違いなくナルトは、今まで出会ってきた誰とも異なる存在だった。





ナルトを抱き上げると、ガチャっとナルトの家の玄関が開いて、赤く長い髪の女性が現れる。





「おかえりー。カカシくん今日一緒にご飯食べてかない?」



「あ、クシナさん。こんにちは」





ナルトの親であるクシナさんとも打ち解けるのは早かった。



気さくで話しやすい彼女とナルトは持っている雰囲気もよく似ている。







「カカシといっしょ!ごはんとー、おふろとー、ふとんも!ぜーんぶいっしょ!」



「ナルト、カカシくんは学校があるんだってば。お泊りはまた今度ね」



「やっ!」





ナルトは俺の首に張り付いて離れない。



これにも慣れた俺はクシナさんに笑みを向けた。





「明日は休講なんです」



「あら。じゃあ本当に泊まってく?」



「ご迷惑でなければ・・・」



「カカシといっしょー!!」



「はいはい。よかったねーナルト」





きゃっきゃっと笑うナルトは贔屓目をなしにしても可愛い存在で、実はナルトが懐いてるのではなく俺がナルトを離したくなかったりする気持ちも大きい。





「なんでだろうね・・・」





そうして夕飯とお風呂と、全部ナルトと共に済ませた俺は、今横で眠るナルトの寝顔を見つけながらその金糸を指に絡ませていた。



ナルトの体温は俺の心の一番奥を温めてくれる。



こうしていると、この子なしで生きていた今までの18年間が何だったのかわからないほど、今の俺はナルトでいっぱいだった。





「ナールト・・・・」



「ん・・・」





優しく額に口づければ小さく身じろぐナルトをしっかりと抱きなおし、俺はふと1つの思いに行き着いた。



ああそうか・・・・





「俺は・・・・ナルトに会うために、生きてきたんだ」





今までの18年間はナルトと出会うためにあった。



思いついてしまえば、そんな気がしてならない。





何をバカな、と思う自分もいたけど、その結論は何の抵抗もなく俺の中に落ち着いて・・・







俺は、腕の中の温もりをしっかりと抱きしめた。













*おまけ*



「カ〜カ〜シ〜!!またナルトを独り占めして・・・!!」



「ミナト!ナルトが起きちゃうってばね!」



「だってクシナ・・・!」



「いいからミナトはこっち!」







***

 
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