小話帳


□デート
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2012・4・28






〜デート〜






ドキドキと緊張から高鳴る鼓動を感じながら、オレは大きな木の下に立っていた。



目の前を行ったり来たりする人たちを見ながら、もう30分はこうしている。





待ち合わせの1時間前に来たから、相手がまだ来ないのは当然なんだけど。





(……うまく笑えるかな)





首元に巻いたマフラーを軽く握って、オレは白い息を吐き出した。





オレは今初めてデートというものをしようとここに立っている。





相手は2つ年上の女の人。



この前任務で一緒だったその人に、今度一緒にご飯行こうと誘われて、オレはそれに頷いた。



行き交う人たちはみんな手を繋いで幸せそうに笑っていて、オレはそれをなんとなく見て思う。





これが普通なんだ。





女の人と待ち合わせして、手を繋いで、笑いながら歩く。



これがきっと普通のデートってやつで。





(これでいいんだ…)





そう思うのに、今オレはここにいるはずのない面影を人ごみに探しては、視線を彷徨わせてしまう。



いるはずないって思うのに、そんな気持ちなんか関係なくもう探すのが癖になってる。





そんな自分が嫌でオレは俯いた。





いるはずない。



わかってる。







でももし、



今ここで待ってる相手が、カカシ先生だったら――……





そんな考えが頭から消えなくて…







こんな気持ちで他の人と会ってても意味なんてあるのかわからない。





オレは迷い始めていた。





やっぱりその人が来たら断って帰ろうか…









そう思った時、俯いたオレの視界に、誰かの足元が映りこんだ。



それは女物の細いパンプスではなくて、





見慣れた紺色の脚絆。





まさか、と思った時、





「ナールト…」



「あ……」





頭上から声が降ってきて、オレは顔を上げた。







(なんで…)







こういう時に限って本当に会ってしまうんだろう。







「先、生……」







見上げたそこには、オレと同じようにマフラーを巻いたカカシ先生が静かにこっちを見て立っていた。








***
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