小話帳


□童話パロ〜赤ずきん〜
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(設定、大筋は借りてますが、諸々カカナル仕様になってます。童話のイメージとかけ離れていますので、苦手な方はご注意ください)





〜童話赤ずきんでパロ〜





昔々……森の奥深くに小さな村がありました。



小さいながらも穏やかに暮らすその村には、人一倍元気な男の子がおりました。



イタズラばかりして村の皆を困らせていたその子ですが、村から離れて暮らすおばあちゃんは特にその子を可愛がっていました。



これは、そんな男の子のお話……









〜〜〜〜〜







「ナルト、おばあちゃんにこれを届けてちょうだい」



「なんだってば?」





金色の髪と青い瞳をくるんと呼ばれた方へ向けたナルトは、差し出された籠を見て首を傾げた。



籠の端から飛び出ている瓶は不透明な緑色で中身の色までは見えない。



でもその籠からはナルトの大好きなお肉の香りが漂っていた。



干したお肉は焼いたものより香りがいい。



くんくんと鼻を籠へぶつかりそうな程近づける。





「ワインとお肉だってばね」





籠をひょいっと上へ上げられ、ナルトはあ、とそれを目で追った。



その拍子にうっかり涎が垂れそうになり、慌てて拭う。





「あれ?ばあちゃん、ワインなんて飲むっけ?」





森の向こう側に1人で暮らしているナルトの祖母は穏やかな人で、いつもイタズラばかりのナルトにも笑顔を絶やさず、それどころか人一倍可愛がってくれていた。



ナルトも、そんな祖母が大好きで小さい頃からよく一家揃って遊びに行ったものだが、最近は会えない日々が続いている。





「欲しいって言うんだから、飲むんじゃないの?」



「ふ〜ん……まぁいいや!これ持って久しぶりにばあちゃんに会いに行くってばよ!」





ナルトは意気揚々と扉を開けた。





「あ、待って!」



「ん?」





振り返ったナルトに、ふわりと何かが被せられる。





「何だってば?」



「あばあちゃんがアンタにって作ってくれたのよ。せっかくだから被っていけばいいってばね」



「赤なんて女の子みたいで嫌だってばよ…」



「今日だけ我慢」



「え〜……」





そう言っているうちにさっさと首元で紐を結ばれ、ナルトは金色の髪に赤いずきんというとっても目立つ格好で森の向こう側にあるおばあちゃんの家へと向かうことになった。





「あ、それとね。森には狼がいるから気をつけるのよ」



「おおかみ?」



「そう。狼はとっても頭がいいの。色んなことを言ってくるけど、聞いちゃダメだってばね」



「オッス!」





ナルトは満面の笑顔で頷くと、改めて扉を開けて外へ飛び出していった。















その森の奥深く。



日当たりのいい草の上で寝転ぶのは、銀色の毛並みを風に靡かせて寛ぐ一匹の狼。





「はぁ……今日もいい天気」





目の前には“成人指定”と書かれた一冊の本があった。



それを爪で器用に捲りながら、からりと晴れ渡った森の空気を堪能する。





狼がすぅっと息を吸い込んだ時、



木々の匂いに混じって、いつもと違う匂いが微かに鼻先を掠めていった。



ピクリと体を揺らして、狼は本から視線を上げる。





「……人間」





それは狼が最も警戒している人間の匂いだった。



目つきが鋭くなる。





人間は天敵だ。



幼い頃から嫌という程覚えさせられた。



人間は様々な手を使って狼を捕えようとするから決して近づくな、と。



でも狼の鼻を掠めたのは、それだけではない。



人間と同じ方向から漂ってくるのは間違いなく……





「肉だ!」





狼はザッと腰を上げた。



ここ数日獲物がぱったりと見つからなかった為かなりの空腹状態で、正直けっこう限界に近い。





「人間は嫌いだけど……背に腹は変えられないよね」





狼は4本足で立ち上がると、匂いを辿って歩き始めた。





遠く微かだった匂いがどんどん濃くなってくる。





「……いた」





緑一色の世界に、一点だけ異色を放つ色を見つけて狼は足を止める。



視線の先でふわふわと動くのは、赤と金。





「なんだ……まだ子供じゃない」





警戒していた人間は、背格好から見てまだ幼い少年だ。



狼は少し緊張を解いて、自らの体を見下ろしてから目を閉じた。



と言っても元々片目しか開いていないのだが。



狼の左目は、縦に大きく走る傷痕によって塞がれていた。







そして狼が閉じていた隻眼をゆっくりと開けると、



視界は高く、狭くなっていた。



見下ろす体に先程までの銀色の毛はなく、代わりに滑らかな肌色が映る。



試しに手を動かしてみれば、爪が引っ込んだ状態の長い指がにぎにぎと意志に反応して動く。





「ま、こんなもんか」





毛皮の代わりによく人間が着るような布を身につけ、狼は赤色を目指して歩き始めた。





***
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