小話帳


□6万打御礼
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2012・8・31


・原作二部

・甘め

・恋人設定






小話〜6万打御礼〜











パチパチと小さな火花を散らして、懸命に燃える小さな火。



震えながらも必死に燃えるその姿は、いつ見ても目が離せなくなる。



山奥にある木の葉では、夜の闇が深い。



だからなのか、それは余計に明るく周りを照らしているように見えた。





「・・・・線香花火ってなんで最後にやんのかなぁ」





ナルトが顔を上げることなく呟く。





「さぁねぇ・・・」





カカシも俯いたまま相槌を打つ。





2人の手には、細い紐があり、その先に小さな牡丹のような火玉があった。





「ナルトのが大きいね」



「う〜大きいと早く落ちちゃうってば」





必死で揺れないように力を込めれば、余計に震えて揺れる。





「ほら、力抜けって」



「わかってるんだけどつい・・・・・あっ!」





ナルトの手にあった線香花火がポトッと落ちた。



その瞬間消える明かりに、ナルトは落胆する。





「あーあ・・・終わっちゃった・・・・」



「俺の勝ちだな」





カカシの一言にナルトは慌てて顔を上げた。



見ればカカシの線香花火はまだ火花が散っている。



消える寸前ではあるが。





「なっ・・・勝負なんて言ってなかったってばよ!」



「線香花火と言えば先に落ちた方が負けでしょうよ」



「ええっ! そういうもん!?」



「違う?」



「う・・・・オレあんま人とやったことないし」





そう言ったナルトの顔が僅かに曇ったのをカカシは見逃さなかった。





「・・・・」





カカシは目を細めて、ナルトの金色の頭をかき混ぜる。



2人で行けなかった花火大会の代わりに、線香花火ぐらいならすぐにできるからと思ってやってきたのにそんな顔はさせたくなかった。





「・・・・ま、なんだ」





ナルトの髪の感触を味わいつつしばらく考える。



そして何かを思いついたようににっこりと笑ってナルトを見た。





「じゃキスでいいよ」





笑顔のまま、ナルトの方へにじり寄る。





「は?」



「ナルトからキスして」



「はぁ!? や、やだってばよ!」





ニコニコと笑顔を向けるカカシにナルトは真っ赤な顔で距離を取った。





「いいじゃない、たまには」





カカシは空いた距離の分だけまた近づく。





「ハイ」





スルッと口布を下ろして。





「ッ・・・・」





ナルトの鼓動は、面白いほどそれに反応して高鳴った。





「こ、こんなとこで何言って・・・」





あっという間に数センチまで縮んだ距離に、うまく言葉が出ない。





「んーじゃあ・・・」



「わっ」





そんなナルトには構わず、カカシはナルトの肩に手を回して、一瞬でその場から姿を消した。





「――ここならいいでしょ?」





目を開ければ、そこはさっきまでの公園ではなく、カカシの部屋。



移動を感じさせない素早い瞬身に、ナルトは目を丸くした。





「ナールト」



「え・・・・」



「・・・・キス」





耳元で響く低音に、ドクンと鼓動がまた1つ鳴る。





「線香花火・・・・次は負けないってばよ」



「・・・・うん」





それは来年も一緒にやろうということ。



次やる時も、こうして一緒にいられたらいい。



たとえそれが守られる確証のない、儚い約束だとしても。





些細な小さな約束が、積み重なって先へ繋がっていくから。





 





***



線香花火が1番好きです^^
 

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