短編


□色彩
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(俺何かしたっけ?)


考えても特にナルトの気に障るようなことはした覚えがない。

くるっと振り返ると、


「!」


目があった瞬間、ナルトはバッと明らかに顔を背ける。

その態度に今度はカカシがため息を零した。


「ねぇ・・・。俺何かした?」


カカシは歩みを止めてナルトの方へ体を向けると、極力優しく問いかけた。


「な、何にもしてないってば・・・」

「じゃ何で目逸らすの?」

「・・・・」


問いかけてもやはりナルトはカカシを見ない。

しばらくの沈黙の後、カカシはふぅ・・と軽く息を吐き出すと少し声を抑えて言った。


「何があったのか知らないけどさ。元気ないと心配するでしょ」


その声にナルトは思わずカカシを見上げた。

そこにはいつもと同じ優しいカカシの顔。

やはり、心臓が煩くて落ち着かない。


「・・・ごめんってば・・・・」


いつものナルトらしくない弱弱しい言葉にカカシはますます違和感を感じる。


「・・・ま、言いたくなったらいつでもおいで」


カカシはそれ以上は何も言わず、ぽんっと頭に掌を乗せると止めていた歩みを再開した。

その後ろでナルトは拳を握り締める。


“言いたくなったら―――・・・”


喉元まで出かかった言葉を心の内側に留めて、ナルトはカカシの手が触れた部分にそっと自分の手を重ねた。

まだそこに温もりが残っている気がして。


こんなちょっとしたことでも、気持ちは膨れていくのだ。

止まらない思いをどうしたらいいのかわからない。

言いたくなったら、なんて。

そんな日はきっと来ない。

カカシに嫌われるのが怖い。


ナルトは閉ざした唇をさらに固く引き結んで、こみ上げる思いに蓋をした。


そっと見つめるだけの恋。

それでも、カカシが微笑みかけてくれるだけで。

世界の色彩が鮮やかになるのだ。


(好き・・・・)


いくら心の奥底にその言葉を閉じ込めようとも、

熱い視線の意味に気づかれるのは時間の問題だということに、ナルトは気づかないのだった。




終わり



***************

読んでいただきありがとうございます!

このカカシ先生はまだノーマルです^^まだ。

カカシ先生大好きなナルト。
そんなナルトが大好きな私。

でも若干ナルトがへたれ気味になってますね;
カカシ先生のこととなると弱気なナルトです^^


2012・1・16 


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