小話帳


□幻の中で…
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遠ざかる意識の中で声が聞こえた。





『ナルトはいい子だ…』





誰がそう言っていたのかわからない。



耳元で聞こえた気もするし、遥か彼方から響いてきたような気もする。





ぐらぐらと揺れる体と共に、ナルトは自分の意識がまるで真っ暗なトンネルを通るように真っ直ぐ沈んでいくのを、どこか人事のように感じていた。



心の底のもっと底。



誰も踏み入れないような所まで落ちていく。







――おいで





真っ暗な空間の先から声が聞こえた。





……だれ?





その声のした方へ目を凝らしても闇が広がるだけで何も見えない。





――いい子だ……そのままここまでおいで……





誰の声かわからないけど、とても懐かしい声だ。





導かれるように、ナルトはゆっくりとその意識を沈めていった。













〜〜〜〜〜〜〜〜







「……これでいい」





ナルトが静かに眠ったのを見届けて、銀髪の男はナルトの頬を撫でた。





「ナルトは誰にも渡さないよ」





嬉しそうに金髪を撫でて、その唇に顔を寄せる。



男は唇を重ねる直前に、ふっと笑った。





「いくら術で記憶を消してるとはいえ、顔を見ても思い出さないぐらいなんだから……この男のこともたいして好きってわけじゃなかったんだね」





楽しそうにクスクスと笑って、男はそのままナルトにキスをした。





「次に目が覚めたらお前が好きなのは俺だけ…」





ナルトに愛おしそうにキスをしながら、次第にその銀髪が黒く変色していく。





何度か触れるだけのキスを繰り返して、ナルトから顔を離した時には、さっきまでの整った顔とは明らかに違った顔の男がナルトを見下ろしていた。







「一目見た時から好きだったんだ……なのにお前はあの男のことばっかり目で追って。俺がどれだけ傷ついたかわかる?」





男は子供に御伽噺を聞かせるかのように優しく語りかけながらナルトの髪を何度も撫でる。









「でも、これからは俺だけを見てくれる」







心底嬉しそうに目を細めると、男は再びナルトに口付けようと身を屈めた。









……が、その唇が触れる前に男はその動きを止める。





今までの優しい顔つきから一変して、鋭く背後を睨んだ。









「………邪魔しないでくれる?」









男がそう言って睨んだ先には、真紅の瞳。



あと少しでナルトに重なりそうだった口元には、気づけば鋭いクナイが宛がわれていた。











「―――ナルトから離れろ」











地の底を這うような低い声が搾り出すように吐き出された。





その声も、真っ赤な瞳も、これ以上ない程の怒りと殺気に満ちていた。










***
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