小話帳


□曇天
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4・19 



木々を掻き分けて黄色い小鳥を追い続けたカカシは、大きく裂けた地面に出くわした。



木製の橋が無残にボロボロになって地割れの両端に引っかかっている。





「チッ」





カカシはポーチを探った。



中には必要最低限の忍具が入っている。



その中からクナイとロープを取り出して切り立った崖の端にカカシが立つと、



壊れた橋の先端に止まっていた小鳥がパッと羽を広げて急降下を始めた。





「え、ちょっと・・・・」





思いがけない方向に飛び立った小鳥を目で追ったカカシは切り立った崖の下へ目線を落として、その濃藍色の目を見開く。



小鳥が降り立ったのは崖の中腹に出っ張った大きい岩。



その上に横たわる金色を見つけて、



カカシは叫んだ。





「―――ナルト!ナルトッ!!」





いくら呼んでもその影はピクリとも動かない。



しかも横たわるナルトの周りは真っ赤に染まっていて・・・・





ザワザワとカカシの心に嫌な予感が広がる。





「・・・・・ッ」





手に持ったクナイを握り締め、ロープを太い木と自分の体にきつく結びつけると、カカシはロープを手に垂直な崖を降り始めた。



そうしてようやくナルトの横に降り立つと、すぐさま脈を確認する。



ナルトの首に手を当てたカカシは、その冷たさにぞっとした。





「――・・・・」





体を見れば大きな傷が何箇所もある。



急所は外れているものの、致命傷になってもおかしくない血の量だ。



祈るような気持ちでカカシはナルトの鼓動を探った。





しかし、





どれだけ待っても、カカシの掌には何の振動も伝わってこなかった。





「・・・・・」





カカシは呆然とナルトの顔を見つめる。





「・・・・・ウソでしょ」





乾いた言葉が小さく漏れた。





いつも笑顔で、うっとうしい程カカシに構ってきて。



冷たくしても無視しても懲りずにカカシの前に現れた。



食事なんてラーメンしか作れなくて。



年上なのに野菜嫌いで、拗ねると子供みたいに頬を膨らますナルト。



でも初めてカカシがナルトの名を呼んだ時は、嬉しそうにその青い瞳を細めてた。







「・・・・ナルト・・・」





勝手に心の扉を叩いて無理やり入ってきたナルトに、いつしか心ごと奪われていたのはカカシの方で。





ナルトの頬に、ぽたりと水滴が落ちる。



雨が降ってきたかとカカシは空を見上げるが、空は真っ青なまま光を降り注いでいた。





「あ・・・」





ナルトの頬に落ちたのは、雨なんかじゃなくて、





「・・・・・・っ・・・」





知らぬ間に零れた、カカシの涙だった―――・・・





「・・・何で・・・・・」





――大切なものなんていらなかったのに





「・・・・・頼むから・・・目開けてよ・・・・」





カカシはナルトを抱きしめた。








***

 
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