BRAVE10 小説

□手を伸ばしても
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「鎌之介、いるか?」


部屋の前で呼びかけるが
返事が返ってこない

…いないのか?




「鎌之介、入るぞ」




襖を開けて中に入ると

そこには
気持ちよさそうに眠っている鎌之介の姿があった

無防備に
そして、微笑しながら



なんだ
寝てたのか

どうりで静かなわけだ



気配を殺して
ゆっくり鎌之介に近づく


男のくせに
色気のある顔
長いまつげ
細い身体
白い肌

どれもこれも
愛おしい



君に触れたい
と思い、手を伸ばすけど

数センチ手前にして
手を止めた


おい

触れてどうするんだ、俺


触れたら理性、抑えられないだろ

そんな恐怖が頭をよぎり
俺は素早く手をひっこめた


触れたら
壊してしまいそうだ

君との関係を大事にしていたい
この関係を壊したくない


だから

このままで
眠っている君を見守ろう

君が起きたら


なんでお前がここにいるんだよ!!


と殴られることだろう

それでいい


今の関係が
いまの君との距離が
俺は好き








手を伸ばしても











鎌之介が才蔵に想いを寄せていた

という事実を知るのは

もう少し先のこと

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