捧
□宿りし幸福
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まさか…。
まさか‥‥、
「妊娠、してますね。」
最近調子が悪くて、生理も来なくて病院に来てみたら、妊娠してるって‥‥。
「未婚‥ですよね?どうされますか?」
どう、と言われても…。
「相手の方と相談して、また10日後来てください。」
「…はい。」
妊娠を告げられてから、ようやく出せた声。
立ち上がり、先生におじぎをして早々と診察室から出た。
待合室で待ってくれてるけんちゃんに出よう、と言って一緒に病院を出た。
お腹にいる小さな命。
オレとけんちゃんの子……。
「なんやって?」
けんちゃんの顔が見れないままじっと俯く。
けんちゃんとの子供が出来たことは嬉しい。素直に喜べないのは、けんちゃんがオレを好きかどうかわからないから。
愛されてる実感はたまにある。だけど、それはけんちゃんの幾つもある愛の1つ。
「…‥妊娠したか?」
「…ッ!!」
「そっか…。」
捨てられる、そう思ったのにけんちゃんの表情は穏やかで、嬉しそうにしている。
「面倒や、ないん?」
「面倒なわけないやろ。愛した人との子やで?幸せやわ…。」
優しくお腹に手を当て、まっすぐ見つめるけんちゃん。
なんだか照れ臭そうにしながら笑うと
「名前、なんがいいかな?」
なんて言うから、涙が出てきた。
「えっ!?嫌やった?」
「ちゃう‥。嬉しかった‥…、子ども出来たからって‥捨てられるん、やないかって‥思ってた。」
オレは、ヤれるだけの女の一人だと、そう思ってた。
子どもが出来ないように祈っていた情事後。中出しされるたびに嬉しくなりながらも怯えていた。
「中に出してたんわハイドとの子が出来るように。子どもができれば、ハイドが手に入るような気がした…。」
だんだんと弱気になってきているけんちゃんの口調。
だから、今度はオレがけんちゃんを抱きしめた。
「オレはもうすでに、けんちゃんのモノなんやで?メンバーでなく、男として見て、ずっと愛してた。だから…」
幸せにして。