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□やくそく
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「っ…い…やぁ…」
大きな泣き声で目が覚める。まだ、ボーッとする頭で布団から這い出た。部屋はまだ暗く、夜なんだなと漠然と思った。
「もん…じろ?」
眠い目をこすりながら声のする方を見れば、同室の潮江文次郎が大きな声を上げながら涙を流していた。
「ど、どうしたんだ…!?」
その様にボーッとしていた頭が一気に覚める。
「ふぇっ…せん…ぞ?」
慌ててそばに寄れば、文次郎は、潤んだ瞳をこちらへ向けた。
「せ、せんぞ…せんぞっ」
そのまますがるように胸元へ寄りかかってくる文次郎をそっと抱きしめ、背をさすってやる。そうしているうちにドタバタと足音がして部屋の障子が開かれた。
「なにかあったのか!?」
「………もんじろう?」
「どうしたの?もんじろう?」
「おい、どうした!?」
ろ組の七松小平太と中在家長次、その後ろには、は組の善法寺伊作と食満留三郎が立っていた。
「みんな…」
なにしに来たの?と問いかけかけて、言葉を飲み込む。これだけの声だ、気づいておかしくないだろう。
「もしかして、せんぞうがなかせたのか!?」
大きな瞳に分かりやすく怒りを込めて迫ってくる小平太に首を振る。
「ちがう、わたしももんじろうの声で起きたんだ」
それでも、なお訝しげな目でこちらを見る小平太を長次が諫なめてくれる。
「もんじろう?どうしたの?どこかいたいの?」
いつのまにか傍らに来ていた伊作がそっと問いかけると胸元の文次郎は頭を横に振る。そして、くぐもった声が聞こえ始めた。
「ゆめを…見たんだ」
「「ゆめ?」」
皆が一様に不思議そうな顔になった。
「み、んなが…みんながいなくなる…ゆめ…」
「…」
それだけ言うと、止まっていた肩が再び揺れ始め、泣き声が聞こえ始めた。しばらくの間、誰もが黙ったまま、その泣き声を聞いていた。
「ば、ばか、そんなことあるわけないだろが…!!」
留三郎は文次郎の頭を小突きながらそう言った。
「わたしたちはずーっといっしょだぞ!!」
小平太は私の胸元に伏せっていた文次郎を抱き寄せながらそう言った。
「……ずっといしょだ」
長次はその傍らから文次郎の頭を撫でながらそう言った。
「だから、ほら、なみだふこう?」
伊作は優しく微笑って文次郎の顔を覗き込みながらそう言った。
「もんじろうになみだなんて、にあわないぞ…!!」
私はぶっきらぼうに手拭いを差し出しながらそう言った。
本当はみなが知っていたのだと思う。
『ずっと、いっしょ』
この約束は果たせないことを。
みなが、心のどこかで気づいていたのだと思う。
それでも、このとき、確かに六人で誓ったのだ。
誰一人欠けることなく 『ずっと、いっしょ』 にいると。
そして、文次郎はぎこちなく、少し恥ずかしそうに笑った。それにつられるように、皆で笑いあった。
――それは初めての桜が散る頃の出来事だった。
fin.
文次を泣かせたかった…それがこれを書いた理由だったりします←
ちょっと暗いお話になりました。
あの六人なら、この誓いを守ってくれると信じてます!!
きっと、あの子達なら大丈夫…
私は、たまごたちの明るい未来を信じてます!!
最後まで読んでいただきありがとうごさいましたm(_ _)m
――
転載と同時に加筆修正しました。
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