短編:inzm
□死にたいという気持ちは所詮、生きたいの反語でしかない
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あぁ、絶望ってこんなことを言うのかな。
ズキズキ痛むはずの腹にはもう感覚は宿っていない。だけど衝撃は止まず、その度に身体は後ろに吹っ飛び口からは意志とは反対に詰まった息と共に嘔吐物が吐き出された。
一体いつまで続けるのだろう。
「…今日はここまでだ。また明日に会おう」
ぼやけた意識の中聞こえた声にやっと終わりが来たのかと少なからず安堵する。痛みはないが空っぽになっている胃から胃液を大量に出すのは流石に苦しいし、しんどい。これが毎日なのだから勘弁してほしい。
「また、逆らったのか」
起きあがるのも億劫な私に声をかけるのはここ、ゴッドエデンのトッププレーヤーである白竜。いつも長官が居なくなり若干の照明を残して部屋が暗くなった頃合いに来る。
正直なにがしたいのか解らなくなる人物だ。
『け、ほ…っわる、い…?』
憎まれ口をたたこうとしても空気と一緒に出るのはかすれた声だけ。あーのど痛い。
「馬鹿だな、お前は」
白竜が側まできてしゃがむ。
『馬鹿で、い…のよ…』
死にたいから。
かすれた声でそう告げれば怪訝な目をし、眉を潜める。赤い、赤い瞳が私の黒い瞳と視線を絡ませた。
「馬鹿な奴」
そう言いながら私を横抱きにして医務室に向かう白竜。あんたのが馬鹿じゃない。
―死にたいなんてとんでもない―
(流れる涙は生きていたい証だものね)
馬鹿みたいな子が生きたいって気持ち隠して死にたいって言う。どんな気持ちで自分のほんとの気持ちを隠すのかな
馬鹿みたいな子、好きです
(120725)