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□及川さんちの妹
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「兄貴はアホだな」



昼休みに唐突に教室にジュースを持ってきた彼女にそう言われた俺は思わず飲んでいたパックジュースを落としてしまった。
冒頭一発目から爆弾を落としたのはかわいかったはずの妹。(いや今でも可愛いんだけどね!!見た目の話とか俺を呼ぶ時の態度の話…いや見た目も可愛いけど!)

その可愛い可愛い妹の名無しの口から。


「アホだなんてぇぇえええええ!!!!!」


「うっせぇクソ川!!!」


「いだっっ!だ、だって!!うちの可愛い妹が!!」


「その通りじゃねーか」

放課後の部活の時間になっても昼休みに言われた一言が離れない。離れなすぎて叫んだら岩ちゃんに後頭部にボールをぶつけられる。
理由を話そうとすればこれだ。


「失礼な!この俺のどこがアホなんだよ」


「そーゆとこじゃね?」


話を聞いていた花巻が通りすがりに言って去っていく。みんなひどくない?


「部活は部活だ、ふ抜けたツラいつまでもしてんじゃねーぞ」



クソ川、と言い残して岩ちゃんも練習に入っていく。俺は捻挫をしてしまった為練習を止められているからコートの外だ。


「あーあ、脚はこんなだし名無しにはアホとか言われちゃうし」




なんかやだなぁ、とぽつり漏らす。


「なに、兄貴。昼間のことそんなに傷ついた?」


後ろからかかる声に首をひねって見やれば名無しの姿が。俺とお揃いはいやだと言ってほんのり赤がかったブラウンレッドに染めた長い髪を高い場所にひとつに結っている。服装は練習をしている途中だからか練習着にしていると話していた黒のTシャツ(後ろにはでかでかと陸上!と書かれている)


「傷ついた。言葉にもバレー部マネしてくんないし、お揃いはやだって髪の毛染めた妹の態度におにーちゃん傷ついてる」


「だって兄貴うっとーしいんだもん。そんなの家だけでじゅーぶん」



どかっと隣に座る妹にため息。監督も中いいねーなんて放置だし。


「部活は?さぼり??」


「兄貴みたいな不真面目じゃないんでぇ〜。もう今日のは終わったから自主練してた」


そういう名無しは確かに汗を流している。もう切り上げるところに俺がいたから寄った、って感じか。


「てか昼間はいきなりなんなのヨ、ほんと傷ついた」


「あ。あー…なんかね。バレーしてる兄貴みてるとね。普段のギャップと違い過ぎてね。おもわず」


「ひどい!!」


でもまぁ。

「アホだけどバレーしてる時は格好いいからいいんじゃないんですカ」


おにーちゃん。なんて頬をぷっくり赤く染めて笑う名無し。


じゃあ私先帰るね、なんて言い残して去って行った後姿を見送る。


「あーーーーーー…」


「なんだクソ川、うぜぇ」


「ほんと岩ちゃんてボキャブラリーないよね!?」


思わず目を覆いうなだれているとコートの外に出てきた岩ちゃんに暴言を吐かれしばかれる。


「なんだ、及川。気分復活?」


「うん、もー妹ちょーかわいい」



去って行った妹の少し赤くなった耳を思い出して笑う。はやく捻挫直して"格好いいおにーちゃん"に戻りたいなぁとか思いながら。





























【おまけ】


「名無しちゃんて照れた顔可愛いね」


「松つんみたいなむっつりにうちの子あげないからね!!!!!!!」

「うっせぇぞクソ川!!!!」
























及川さんてイケメンですよね
(18/03/09)


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