短編:inzm
□荒野を駈け巡る風は空を飛ぶ鳥をも追い越す
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河川敷のグラウンドに動き回る影二つ。
一つは天馬、一つは俺。
珍しく今日は信助は用事があって出てこれないらしく天馬と二人でパス練習をしている。
「なぁ、天馬!」
「なにー?名前っ」
ドリブルしつつ天馬にパスを出し声をかけると天馬も声をパスと共に返す。
「サッカー、楽しいな!」
「あぁ!サッカー、楽しい!」
あっはは!と二人でドリブルしつつ笑えば天馬が走るのをやめて止まる。
「天馬、どうした?っと、」
止まった天馬の元へ駆けよればぎゅう、と抱きついてくる。
「俺、間違っていないよね。…サッカーって、楽しいものだよね…?」
ぎゅうと抱きついてくる力を強めながら天馬は俺の胸元に顔を押しつける。昼間の倉間さんのことだろうな。
「天馬はサッカーがしたいんだろ?でも今やっているのはサッカーじゃない。だからサッカーをやるためにサッカーしてるだけだ…お前は間違っちゃあいないよ」
にっこり笑いながら抱きしめ返してやれば天馬が顔を上げる。その目元は若干赤くなっている。
「…ときどき、分からなくなるんだ。今、自分がやってることが何とかならなくなったりしたら、って思うと…」
微かに震える天馬の身体を再度ぎゅうと抱き締めてやる。
「安心しな、なんとかなる。そう信じていればなんとかなるもんさ。俺はお前の味方だよ、天馬」
「名前…」
抱き締めた俺より少し小さな身体にそっと心の中で誓う。
ーお前が荒野を駈け巡れるようー
(俺が導く鳥になろう)
(いつか追い抜かされるけれど)
はい、倉間先輩の例の台詞の後ですね「サッカー部をつぶそうとでぃてるのはお前じゃないのか」ってやつ。相当きついと思う、だってまだ中学一年だもの。実際だったらどちらも苦しいよね。
初めは明るい予定だったがいつの間にか暗くなっちまうのは何故だ←
(120107)