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なんでやおもてもしゃあないもんはしゃあない。腹くくるしかない時もあるもんや
「楽しみやなぁ信ちゃん!」
たとえそれが大事な姉さんが元凶やとしてもや。
【お稲荷さんは好きですか?5】
その日は思えば朝から運はなかった。占いも見てへんけどよくはなかったやろう。
いつもの時間に起きたはずが少し家を出るんが遅かった。いつも朝通るルートの俺の顔をみたらしっぽぶんぶん振ってくれる癒しの犬の姿が無かった。学校の階段登ってる時にちょっとけ躓いた。
あんまりいつもないことやけどわんこがおらんことだって今までもあったし、け躓くことだってある。せやからあんまり気にせんかったけど。
「しーんちゃん!」
これはいただけん。
学校が終わって放課後に入る。
掃除やら日直やら委員会やらやらなあかんこと全部やったあとは部活の時間や。
いつも通り、おんなじことを変わりなくきっちりと。やろうと思ってた矢先に名無し姉さんの姿が体育館の入口から見える。
「あー!!名無しさんやぁ!」
「ほんまや、どないしたんですか」
溜息つくんと同時に侑と治が犬みたいに寄る。
「信ちゃんに用事があってなー。元気そぉやねふたりともー」
元気もっと出るから撫でて下さいよーなんて言いながら頭を下げてくる侑のてっぺんをよーしよしよしとムツゴロウさん宜しく撫でくり回す姉さんを見るとまたため息が出そうになる。
三人に近づき便乗しようとする治のどたまをなでる代わりに抑える。
「ええ加減にしときや、自分ら。姉さんも用事あってきたんやったら先に俺のとこきぃや」
「北さんいたいですって。俺まだなんもしてもらってないですやん」
「連帯責任や。はよ侑と外周行って来い」
ぶーぶー文句を言う前に外周にたたき出す。
慌てて走り出した双子の後姿を見送ってると服の裾を後ろから引っ張られる。
「堪忍なぁ信ちゃん」
あぁもう。そんな眉垂らした顔で謝られたら許すしかないやんけ。
「…ええよ。ほんでどないしたん」
「あ、せやった!あのなぁ」
要件を促せばぱっと話しだす姉さんにばれんようにため息一つ。
しばらくは腹くくるこの環境でも我慢したろうな。
北さんはお兄ちゃんに欲しいです
(18/04/11)