彼彼論議
あたたかい昼下がり。
オレはふと、まどろみから覚めた。
何やら居間の方が騒がしい。
この時間帯は窓際で日向ぼっこをするのがオレの日課である。
「……?」
オレ様のせっかくのお昼寝タイムを――
「絶対七分よ!!」
「いいや、ハーフパンツのあの丈は正義だ!」
声から推測するに――というか今はシルバーとクリスしか家にはいないはずだ。
あいつらがあんな激しい口論をするなんて珍しい。
一体何の話題だか。
「ハーフパンツじゃなくて短パンの間違いでしょ!?しかもあれは生足曝してるのよ?破廉恥すぎるわ!」
「では言わせてもらうが七分では正義領域の太ももが隠れてしまうだろう!あの素晴らしい肌を見せつけないでどうする!?」
「素晴らしいから敢えて隠すんでしょう!?っていうかあなたゴールドのふくらはぎの魅力を知らないの?」
………………。
オレの話かよっ………!!!!
急に頭が痛くなってきた。
何やってんだあいつら…!!
そんなオレの心配をよそに彼らのどうでもいい口論は続く。
「ほう……そこまで言うのかクリス」
「当たり前よ!16なのに短パンなんてはかせられないもの」
「16で短パンをはいたってゴールドなら許される!」
「!」
「何せ短パンでもふくらはぎは拝めるからな」
「だからそれが破廉恥だって言ってるの!あんなに素晴らしい脚なんだから私達が独占しないで誰がするのよ?」
「…それも確かにそうだな。あ…そうだ、それならいっそ」
「いっそ?」
ものすごく嫌な予感がした。
音速の速さでタンスをひっくり返して長ズボンをひっつかむ。
「ミニスカを――」
バン、と扉を乱暴に開ける。
「ゴールド?」
澄んだ銀と水晶の瞳が瞬かれる。
オレは手にしたズボンをかざした。
「オレ、これから長ズボンはくから」
「「――それはだめ(だ)っ!」」
オレが掴んでいたズボンは光速の速さでひったくられ、まさかのバクたろうの(くしゃみによる)発火事故によって灰になった。
了
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シルは何でも行ける派。
敢えて言うなら露出を押したい気もする派。
クリスは七分派。
短パンは破廉恥だと認識。
私の認識も彼女に近い。