10万打企画
□高月様リクエスト
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□のびやかな非日常□
「卿は反省という言の葉を知っているか」
「知らないって言ったら、私、どうなっちゃいますか?」
「……」
ボロッボロの官兵衛さんは、ものすごい無言の圧力で、私の精神を押しつぶそうとしてくる。
「知っていますです、はい…」
こうなった経緯というのが、先程運悪く官兵衛さんが私の罠にかかってしまったから。
別に彼を掛けようとかそう言った魂胆ではなかった。
ただ、その罠というのが、たまたま連続的にかかってしまうというものでして…。
どういうものかって…
最初にね、足元のヒモに引っ掛かって転びます。
(官兵衛さんは珍しく「!」ってなってた)
それで、転んだ先の穴に落ちます。
(官兵衛さんはこれまた珍しく「!?」ってなってた。思わず吹いたのは内緒)
その上に、金ダライに入れていた水が降りかかりまして、更にその金ダライが頭の上にゴーンって落ちる仕組みです。
(穴の中から「ぐっ」って聞こえてきたから、多分直撃)
一応"対みつゴン用"だった。
仮に彼がかかったとしても、私はどれかはハズれると思っていたのだが…。
特に金ダライなんか…ねえ…?
しかし、官兵衛さんは運悪くも、この一連の罠、全てにかかってしまったらしい。
存外、三成さん並みに漫画級だったな、この人。
「ゴメンナサイ。官兵衛さん用ではなかったんです」
「なれば、誰用だ」
「ミツで始まって、ナリで終わる人です」
「丸分かりである。
私を狙った行いでないとは分かった。とはいえ、感心せぬな」
「……すみませんでした。大変反省しております」
シュン、とうなだれ、精一杯反省の意を示す。
「よろしい」
しかし、きちんと謝ったというにも関わらず、官兵衛さんは冷徹鬼軍師。
そう、"鬼"軍師…。
「ならば、反省の意を文として、三千の文字にしてしたためてこい」
「反省文!?しかも三千文字!?」
「異議を申し立てるならば聞く。ただし、私を言い負かせねば、減刑は望めぬが」
「鬼ーっ!悪魔ーっ」
「既知であろうに。何を今更騒ぎ立てる」
「それ用の紙を用意しよう」、と立ち上がった官兵衛さん。
私は腱鞘炎(けんしょうえん)を恐れ、「やだーっ」と叫びながら外へと飛び出した。
背後から「待て」と聞こえたが、冗談じゃない!
読書感想文ですら百文字書くのがやっとだというのに、反省文を、しかも三千文字!
そんな事をするくらいなら、ひと思いにやってほしい。
いや、やっぱやめときます…。
官兵衛さんの体罰は、悲鳴なしに終わらないから。
しかし逃げてもねえ…。
いずれは捕まってしまい、反省文どころでは済まされぬのがオチ。
官兵衛さん厳しいんだもんなあ、もう。
腕を組み、廊下を歩きながら、はあ…とため息をついた。
「#name#ーっ」
そんな折に駆けてきたのは半兵衛さん。
息を弾ませながら、私に抱きつく。
「大変だよ、大変!」
「は、はい、どうしました?」
半兵衛さんは丸い瞳をウルっとにじませると、少し大げさに涙を拭った。
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