10万打企画
□高月様リクエスト
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「元就殿がね…」
「はあ…元就さんが…?」
「書物のね…」
「うん、書物の…?」
「下敷きになって…」
ぐすっと半兵衛さんが鼻を鳴らす。
「えっ!?なっ、死んじゃったの!?」
「あ、ちょっと、」
私は半兵衛さんの話をみなまで聞かず、駆け出した。
元就さんの部屋の前に来て、思い切り戸を開ける。
「わあああっ大殿おおっ」
そこには本に囲まれて仰向けに寝ている元就さんがいて、私は涙目になって駆け寄った。
「わああん!元就さああん!私を置いて逝っちゃうなんて……そんなああ!」
元就さんの胸にすがりついてワンワン泣く。
「今まで
『大殿寝すぎて死亡説』
とか
『自分で上に放った矢に脳天貫かれて死亡説』
とか
いろいろデマ流したのは私ですけど、そんな大殿がまさか本当に死んじゃうなんて……しかも書物に潰されるなんて、あっけなさすぎますよー…!」
元就さああん!と、胸に顔を押しつけて泣いたら、後頭部をポンポンと叩かれて「何だい」と言われた。
「少し昼寝をしていただけだよ。また半兵衛殿にからかわれたのかい?」
「……え」
「それにしても、最近兵士が私の顔を見て、やけに驚くと思ったら、君の仕業か。私がどうしたって?」
「…あ、いや…あの…違っ」
し、しまった…!
うっかり口が滑りすぎて、とんでもないことを口走ってしまった…!
慌てて逃げようとしたら、元就さんは寝転んだまま、私の後頭部に添えた手に力を入れ、引き戻した。
「まだ話は終わっていないよ」
「わわわっ、ごめんなさっ…わぷ!」
また胸に顔を押し付けるような形になって、驚いてバタバタと暴れる。
「はいはい、暴れない暴れない」
元就さんは横向けに寝転ぶと、私を抱いて「うん、良い抱き心地」と呟いた。
「虚言を振りまいた罰として、私と一緒に昼寝。
寝てからわりとすぐに君に起こされたから、眠いんだ…」
すぐにスゥ…と寝息が聞こえてくる。
「……」
あ…元就さんの心臓の音が聞こえる……。
いい具合に眠気を誘ってくれて、私もトロンとまぶたが落ち始める。
心地よくまどろみ、元就さんの胸に顔を押しつけ、目をつむった。
「ぶふっ…!な、なるほど、それで#name#を追ってるんだ」
半兵衛は必死に笑いをこらえながら、官兵衛を見上げる。
対する官兵衛は、疲れきった顔で頷いた。
「……#name#には、いつも頭を悩まされる」
「あっはっは、いいじゃない。官兵衛殿、以前よりすごくいい顔になってるよ」
「……」
この顔のどこがだ。
という言葉は飲み込んだ。
半兵衛に言っても通用しないし、今はそれよりも#name#を探す事が先決だと考えたから。
「それで、#name#はどこに行った」
「ん?それがね、俺の言葉を全部聞かずに飛び出しちゃって……。多分元就殿の所にいると思うよ」
そんな会話をしていると、その問題の元就の部屋へと着いた。
半兵衛が「元就殿〜」とゆるく呼びかけるも、返事はない。
いないはずはないんだけどなあ、と呟いた半兵衛は、仕方なく、許可を得ずに襖を開けた。
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