10万打企画

□高月様リクエスト
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「元な……あっ」

「何だ」

意味深に声を漏らした半兵衛に、官兵衛も気になって室内を覗く。

書物により、足の踏み場もないくらい散らかっているのはいつもの事。

問題は、その部屋の中心にポッカリ空いた場所に眠る二人。

書物に囲まれて眠る二人は、声をかけても到底起きそうにはない。

「ええー…ちょ…うらやましいなあ、元就殿…」

むぅ…と不満げに唇を尖らせた半兵衛は、「そうだ!」と指を立てる。

「俺も一緒に寝ちゃおっ。ほら、官兵衛殿も」

「やめぬか。私はまだ執務が…」

「はいはい、カタイこと言わなーい」

グイっと手を引かれ、官兵衛は均衡を崩しそうになりながらも引かれるままについて行く。

書物の合間をうまい具合に進み、元就と#name#の元に来ると、半兵衛は上機嫌に

「んじゃ、おやすみなさーい」

と言って、もう寝てしまった。

「ああ、おい…半兵衛、卿も執務が残って……って、聞いておらぬな」

盛大なため息。

「……」

腕を組んで、眠りこける三人を見遣る。

三人とも高名な軍師であるというのにな…。

こうも緩みきった顔をしてしまっては、示しがつかぬ。

名高いからこそ、兵の模倣となるように…

と言ったところで、この三人は恐らく変わらない。

むしろ、兵士たちもそれを知っているからこそ、この者たちを慕い、集まる。

ことさら#name#は、昔からよく兵士の体調を気遣う。

それがどのように低い地位の者であっても、顔色が悪いだけで、すぐに気付くのだ。

彼女の周りに集まる兵達には、尊敬の念も恋慕の情も伺える。

彼女自身、それに気付いているのだろうか。

体調を気遣う事、それが軍師の仕事の一環だと思っているのか、あるいは生来か…。

「えへへ…もうお腹いっぱいッスよ、官兵衛さん……」

「……」

元就の衣を握ったまま、実に幸せそうに呟いた#name#。

恐らく後者だ。

このようなアホの申し子が、仕事の一環だと考えるはずがない。

はあ、とついたため息は、三人の誰にも聞こえていないのだろうな。

「……このような隙も、必要なのやもしれぬな」



といっても、#name#ほど隙だらけにはなりたくないが…。



と呟いた言葉も、恐らく誰にも聞こえていなかった。








(『願わくば、いつまでもこの者たちと共に時を過ごしたい。一人として欠けることなく』

柄にもなく祈った事は、絶対口には出さない。出してしまえば後悔する。
万一誰か欠けてしまった時、それを口に出した事を…否、そもそも願った事自体、後悔する。
最初から想わねば良かった…と。想わねば、このような感情すら抱くことはなかったのに…と。

そのような思いは、もうたくさんだ)




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