10万打企画
□高月様リクエスト
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「あの、ですね…。馬超さん…」
「うん?若?」
「はい。馬超さんって、その…大丈夫なんですか?」
「え?頭が?」
「いや、違…って、馬岱さんもそういう扱いか…」
「ええ?ちょ、頭抱え込んでどうしちゃったの?」
「ちょっと…馬超さんの扱いのひどさに涙が…」
私はこうなった経緯を全て話した。
馬超さんの扱いのひどさ、そしてそれについて彼はなんとも思っていないのかと…。
「なーんだ、そんな事だったの」
馬岱さんは「心配して損しちゃったよー」と、ケラケラ笑っている。
「いや、笑い事じゃ済まされないくらい非道くないですか?特に城の天辺から突き落とされたって…」
「ああ、それね。それはね、半分若が悪いの」
「もう半分は?」
「姜維殿」
「はあ…姜維さんが…?」
「うん。えっとねえ…話すと長くなるけど…」
腕を組んで眉間にシワを寄せた馬岱さんは語り始めた。
ほら、"何とかと煙は高い所が好き"って言うじゃない?
それで、まあその日はたまたま大掃除の日で、皆あくせくしてたのよ。
若は屋根の掃除を任されていたんだけど…。
若、掃除に一生懸命になりすぎて、登りに登って登りまくって、結局城の天辺までついちゃってね。
何故だか若、それが嬉しかったみたいでねえ。
天辺で一人でわーわー騒いでいたらね、姜維殿ったら、それを見上げて目に影を作ったと思えば、持っていたホウキの柄を握力で砕いちゃって…。
ほら、普段大人しい人が怒ると怖いって良く聞くでしょ?
姜維殿ね、諸葛亮殿に
「ピカピカにしないとどうなるかわかってますよね」
って、大掃除を仕切るように言われてたみたい。
だからその大掃除に命をかけていたって時に、若の能天気さにブチっとイっちゃったのよ。
大掃除ごときでと思うでしょ?
でも姜維殿は『丞相命』だからねえ。
それで、姜維殿も天辺まで登ると、青筋浮かべた笑顔で若を突き落としちゃったってわけ。
「こ、怖…」
何だか馬超さんの不憫さよりも姜維さんの意外な恐ろしさの方が頭に入ってきちゃって…。
「うん。でも五分五分でしょ?」
「5:5ってか、多分3:7なんじゃ…。馬超さんはちょっと浮かれてただけなんだから…」
「そう?それでも若、ちょっと鼻血が出たくらいで、特にこれといったケガはなかったしねえ。
それに本人が全く怒ってないんじゃ、何とも言い難いもんだよお」
「怒んなかったの!?城の天辺から突き落とされたのに!?」
「うん。というか、衝撃で記憶が飛んじゃったっぽい」
「う…。ちなみに諸葛亮さんに"うっかり"水をぶっかけられた事については?」
「ああ、それは…。
うん、若のせいで策が台無しになった戦の後だったんだよ…。諸葛亮殿、顔に出ないから……ねえ…?」
「……ですね」
二人して青ざめて、庭の方へと目を移す。
サアッと草木がなびく様を見ながら、お互いにため息。
「なんか、本人が気にしていないから、不憫…ではないんでしょうね」
「そうそう、そういうこと」
本人(馬超さん)がその扱いを非道いと思っていないから、私がどれだけ同情しても、それは成り立たないものなのだろう。
それほどの頭の馬超さんが、ある意味うらやましい。
「あと、ほっぺたの傷についてですけど…」
私が自分の左頬をつんつんと指して、馬岱さんに聞いてみると、彼は「ぅっ」と声を漏らした。
「あれ、ね…。あれは…」
「えと…趙雲さん……ですよね…?」
「うん…。若が#name#殿と遠乗りに行くって嬉しそうに話してただけなのに、趙雲殿ったら……」
「……こ、今度はこそっと行くことにします」
「そうだね…。そうしてちょうだい。その時は俺も連れていって欲しいなあ」
「はい。じゃ、"こっそり"行きましょう」
顔を見合わせ、互いにへらっと笑う。
恐らく、馬超さんのおもりをするのも、行き過ぎた皆さんを止めているのも、馬岱さん。
彼も苦労人なんだろうなあ…。
今度彼に何かおいしいものでも作って持っていこう、と思いながら帰路を辿ったのだった。
―――――
お礼
高月様、企画への参加と沢山のリクエスト、ありがとうございました!
複数ありましたので、短めのお話を…と思って書いたつもりでしたが、どうも長くなってしまって…。
しかも趙雲と幸村に関しては、大変やらかした思いで一杯です…。
しかもおなご達との絡みを果たせなかった事を、書き終えてから気付きました。
申し訳ないです!時間がありましたら、追加で書かせていただきたく…!
このようなものでも宜しければ、どうぞもらってやってください(*´`*)
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