10万打企画

□雛南様リクエスト
2ページ/3ページ

「どうした?飲まないのか?」

「……あの、これ、お湯に薬を溶かしたんですよね?」

「ああ」

「何かね……あれ?おかしいな。私の知ってるお湯じゃないですコレ」

何だかドロっとしています。

凝固しかけた物体…つまり液体と個体の中間くらいのもの。

しかも色が付いていますよ。

茶色…いや黄色かな?

それらの中間の黄土色というべきか……わかった、コハク色っていうんだ。

「そんな事はない。お湯だ。恐らく」

「うっ、ウソだ!」

グイグイと湯呑を近付けてくる元親さん。

うわ何だこの香り、甘ったるい!

怒鳴りたい気持ちを必死におさえ、あくまで冷静に湯呑を押し返す。

「さっきから元親さん、曖昧な物言いですね。全部"恐らく"って言っちゃてますもん。
そもそも溶かしたの、本当に風邪薬…?何かイケナイ感じのお薬なんじゃないんですか?」

「イケナイ…とは、何だかよい響だな。#name#が言うと卑猥に聞こえる」

「あんたの方が卑猥だよ!」

「良いから、#name#が想像したイケナイお薬とはどんな感じの薬か言ってみろ。気になる」

「しまった地雷踏んだ!違う違う!元親さんの妄想してるのと、多分違うヤツ!」

「フッ…嘘つきは楽しい時間の始まりだ」

「正しい日本語でお願いします!」

ギャーギャーと喚きながら湯呑を押し返そうとするが、いかんせん彼の方が力は強い。

「っ」

半ば無理やり口元に宛てた湯呑を傾け、ドロっとした液体を流し込まれた。

といっても、水と違うこの液体、ドロドロしてて引っ掛かってしまい、殆ど口に入ってこない。

それでも少しだけ流れ込んできた物があまりにも甘くて、思わず元親さんを押し返した。

口角にわずかに垂れるその液体を飲み込んで、甘い味に犯されている舌を出す。

「これ…ハチミツですか?」

「その他諸々。美味いか?」

「うまいっていうか、甘い…」

口の端から垂れる液体を手で拭おうと、腕をあげた瞬間、その手を掴まれた。

かと思えば、ぺロ…と、生温かい舌が口角を這った感覚に、鳥肌が立つ。

「確かに甘い。もう少し味を調節すべきだったな」

ボッと音を立てながら火がついたんじゃないかってくらい、頬が染まるのが分かった。

「ん、しまった、熱が上がったか。やはり栄養を取って寝ておかねば」

「っ……」

バカっ、て言ったつもりだが、口だけがぱくぱく動いて、声は出てこない。

「何だ魚の真似か?ほら、飲んでしまえ」

また私の口元に湯呑を近付けて来る元親さんから目を逸らす。

……もう飲んじゃおう。

飲んで、寝て、さっさと良くなって、この人の事は忘れよう。

受け取ろうと手を伸ばしたら、何かを思い出したのか、彼はそれを私の手の届かない位置まで上げた。

虚空をかすった手を見て、私は眉根を寄せる。

「思い出した」

「なっ、何を?ちょっともう頭痛いんで、早く寝たいんですけど…」

「……」

ガンガンと痛みが響く頭を押さえながら言ってみれば、元親さんは私を見下ろして口角をあげる。

うっ、この笑み苦手…。

元からロクでもない事ばかり考えている彼が笑う時ってのは、更にとんでもない事を思いついた証。

予想は的中、元親さんは、湯呑の中の液体とも個体とも言えない物を、人さし指と中指ですくったかと思えば、私の口元に近づけてきて、思わず目を見張った。

突然の不可解な行動に眉根を寄せて、元親さんを見上げる。

「三成にはしたのだろう」

「は…!?」

「俺には、舐めて奉仕をしてくれないのか」

「ちょ、元親さん、それマズイ!違う意味に聞こえ……んっ!?」

少し強引に指を突っ込まれ、慌てて彼の腕を掴む。

「んー…っ!」

抜こうとして引っ張るのだが、逆に少し奥まで入れこまれて、苦しさに涙を滲ませた。

「きちんと舐めろ」

訴えかけるように睨んでも、元親さんは加虐的に笑うだけだった。

「っ――!」

ギュッと目を瞑って、必死に指の液体を舐めとる。

無駄に甘ったるくて、本当に栄養があるのか疑わしいそれは、喉にも引っ掛かって軽くむせてしまう。

「ふっ…ぅ……っぁ」

ようやく引き抜かれて、同時に軽い咳が出てきて、涙目で息を整えた。

はぁ…と口元を拭って、一つや二つ文句を言ってやろうとしたが、熱が上がってしまったのか、頭が痛くて、クラクラしてきて、何も言うことが出来ない。

せめて睨んでやろうとしたが、元親さんは元親さんで、再度指に液体をすくって、こちらへと差し出した。

「ほら、口を開けろ」

「……」

悪びれる様子もなく、さも平然とした態度にムっとした私は、唇を結んで顔を逸らして完全に拒否。

「……垂れてしまうぞ」

チラッと元親さんを見遣ると、視線は動き回った事ではだけてしまった胸の方にある。

慌てて共襟を寄せ合わせようとしたのだが、時すでに遅く、宣告通りに指先から粘着質な液体が、ポト…と胸元に垂れた。

「っ!」

冷たいしずくにビクっと体が弾んで、それでも口をひらない私に対し、元親さんはフッと笑う。

 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ