10万打企画

□紫音様リクエスト
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いやしかし反省しています。

ほんっとうに反省しています。

人がいい……いえ、イイ人である鍾会さんを生贄に捧げ、私は傷一つ負うことなく逃げ果せることが出来たから。

だからこうしてお菓子と救急箱を持って、お詫びに向かっている最中。

「鍾会さん鍾会さん」

コンコンと戸を叩いて呼んでみれば、戸の奥から傷だらけの鍾会さんが顔を出した。

「お前…!先程はよくも…っ」

端正な面持ちには不釣合いな傷が沢山。

ありったけの怒りを込めて睨まれるが、私は頭を下げながらスッとお菓子を差し出した。

「す、すみません。ほんとゴメンナサイ。あの、お詫びに…」

「お詫びだと?」

チラリと顔を上げて鍾会さんを伺えば、一度お菓子を一瞥して眉根を寄せ、「まあ」と扉を開けきった。

「入れ」

「失礼します」













「あの」

作ってきたチョコレートケーキを切り分けつつ、横目に傷だらけの武将さまを見てみた。

彼はケーキが珍しいのか、それをジッと見ていたようだが、私の視線に気付いたのか慌てて目を逸らされる。

「何だ」

椅子に座って足を組み、机に頬杖をつく鍾会さんは、まだ随分と機嫌が悪い。

あと顔色も悪い。

「負けました?司馬師さんに」

「ぐ…」

彼はバツが悪そうに目を逸らして、フワフワ(いやクルクル?)した髪をいじり始め、更に機嫌が悪くなった。

「英才教育、通用しました?」

「うっ、うるさい!元はといえばお前が…」

みなまで言わせず、小皿に分けたケーキを差し出す。

「お詫びです。どうぞ」

「……」

言葉を遮られ、もの言いたげな鍾会さんだったが、目の前の好奇心に負けたらしい。

ケーキをジッと見つめ、眉根を寄せる。

「……黒いな。食べられるのか?」

「多分」

急いで作ってきたものだから、味見はしていない。

でもきっと恐らく大丈夫。

「……」

ケーキと私を交互に見て、訝しげな表情を浮かべるが気にしない。

私は私で、包帯やら消毒液やらを用意して

「手当、していいですか?」

そう尋ねると

「好きにしろ」

と、そっけなく言われたから、勝手に手当させてもらうことにした。

そっけなく、というよりも、ケーキを初めて見るのか、そちらに釘付けになっているようで、返事に身が入らないというのが正しいのかも。

私が勝手に手当をしている間、鍾会さんは恐る恐る口にケーキを運んでいる。

かと思えば、ムグムグと咀嚼した後、何か衝撃的だったのか、先程のように後ろ髪がピコンと動いた。

やっぱあれ尻尾なのかな、なんて思って、思わず笑ってしまう。

美味しかったのか、一口食べた後は次々と口に運ぶ彼を見て、笑ったまま尋ねた。

「お味は?」

「ま、まあそこそこ…。お前が作ったのか?」

「はい。お気に召したのなら、また作りますよ」

「お前がどうしてもというならば、もらってやらんでもない」

なんだかこの人、ツンツンしたところが三成さんに似ているな。

なんて思うと、笑いが止まらなくなってしまった。

  
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