10万打企画

□紫音様リクエスト
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□道連れ□

『この親にしてこの子あり』の続き。

※断然鍾会との絡みが多いです
※若干キャラ崩壊あり!苦手な方はご注意ください!




――――――




私は鍾会さんと共に狭い建物の物陰に身を潜め、息を殺していた。

息を殺すと言っても、二人して肩で息をしていているものだから、呼吸を抑えるのにも限界がある。

加えて、運動後に出る汗と冷や汗とが同時に出ているもので、服が肌に張り付いて気持ち悪い。

「まいたか…?」

物陰から顔を覗かせ、辺りを伺う鍾会さんは、誰かを見付けたらしく、再度慌てて身を潜めた。

「だ、誰がいました?」

「司馬師殿だ…」

二人して青ざめ、また息を殺す。

「く…っ、何故私がこのようにコソコソしなければならないんだ…!お前など匿わなければ良かった…」

「そんなこと言われましても…」

私を睨むように見下ろしたって、現状は変わらないんですから。

とは言わずに、代わりに少し大げさにため息をついてみる。

「仕方ないです。鍾会さん、人が良いから」

「せめて良い人と言え!」

その怒鳴り声が、また(リアル)鬼ごっこの開始の合図になろうとは、鍾会さんも私も予想だにしていなかった。

鍾会さんの背後にある壁の角を、黒い手袋をつけた手がガッと掴んだかと思うと、そこから静かに姿を現したのは鬼、こと司馬師さん。

「うっ」

と声が漏れてしまうのも仕方のないことでして…。

どうやら鍾会さんは背後の司馬師さんに気付いていないようで、私の妙な声を聞いて眉間にシワを寄せる。

「何だ、妙な声…を……」

振り向くにつれ、徐々に声が小さくなっていく鍾会さん。

その先にいた司馬師さんを見た刹那、鍾会さんの肩が跳ねると共に、後ろにくくってある髪がビクッと上に跳ね上がった。

アレ、もしかしたら尻尾なのかな。

なんて思いながら、私は気付くのが彼より早かったから、既に逃走体勢。

「私を差し置き、逢い引きとはな。それも英才教育の成果か?」

「こ、これは…その…ご、誤解…」

「誤解?それにしては随分と良い汗をかいているな。呼吸も荒いようだが?
#name#に何をしていたか、答えてもらおうか」

司馬師さんの掴む壁がミシリと軋み、そこから見事なひび割れが生じる。

「う…違っ……#name#、お前も何か言っ……って、おい!私を置いて逃げるな!というよりお前足早すぎるぞ!」

「よろしくお願いします鍾会さん!」

「何をよろしくするんだ!おい待て!」

「逃がさぬ」

「司馬師殿、違……ぐああああっ」

















司馬懿さんより、司馬師さんを対象にした縁談の話が出て以降、私はあの親子を含めた、晋の人たちに追い回される事となった。

木の上に逃げて、半泣きで身を潜めているところ、枝が折れてしまい、落下した先にいた鍾会さんに見事激突。

散々怒鳴られたものの、泣きかけた私の顔を見た彼は、戸惑いながらも私を部屋に招いてくれた。

事情を話すも、まあそれなりにぶっ飛んだ縁談だったもので、半分も理解してもらえなかった。

しかし司馬懿さん、師さん、昭さん、そして元姫さんまでもが私を探しているという異常な状況は分かってもらえた。

そして彼はかなり困惑しつつも、私を匿ってくれたというわけでして…。

グスグスと泣きながら、彼がくれた肉まんをもしゃもしゃと頬張っていると

「な、泣くな。ほら涙を拭け」

と言って、なんか上質な布まで差し出してくれるものだから、(あの親子との差に感動して)感涙がダバッと溢れた。

布も受け取らず泣く私に、鍾会さんはかなり戸惑いつつも、少しかがんで、私の涙をゴシゴシと拭いてくれて、うわ何か第一印象と違うよこの人、なんて思ったり…。

……でも、「鍾会さんって意外とイイ人」だなんて感動している暇なんてなかったんです。

その少しかがんだ体勢が、どうも私の顔の位置と重なっていたようで…。

横から見たら別段問題ないのだが、どちらかの背後から見れば、キスをしている体勢に見えないでもなかったようだ。

結果、それを鍾会さんの部屋に搜索に来た司馬師さんに見られてしまい、先程の状況に至る。


  
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