*おはなしA*
□*あなたの隣*
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パンパン!
初詣。
あたしは、あなたの隣で、お願い事を頭で唱えます。
*あなたの隣で*
「何を願い事したんだ?」
「えっ?!」
神社の本堂で参拝をすませ、参道に並んでるたくさん出店……あまりの誘惑の多さに何を食べるか悩んでいたら、隣にいた彼があたしに話しかけてきた。
「願い事、やったら長いこと拝んでたから」
おぉ…、さすが黒崎クン
「…見られちゃいましたね…」
「いや…、隣にいるんだから、わかるよ、そんぐらい」
「……たしかに…」
「…で」
「で?」
黒崎クンの意地悪な顔。
「何をお願いしたんだ?」
うっ!
それだけは…
「い、言えません…」
「なんで?」
だってぇ
「言ったら、お願いが叶わないって聞いたもん。…それに」
「それに?」
「黒崎くんは、教えてくれる?お願い事」
「そ、そんなんいえるかっ?!
だから、あたしも意地悪な顔をした。
「でしょ?…だから、言えませ〜ん♪」
「おまえ…」
「あっ?!イカ焼き屋さんだ!…黒崎クン、イカ焼きにします!」
あたしは、イカ焼き屋さんに一直線!
「おいっ!井上!」
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「おいひぃ〜♪」
参道から少し離れた公園で、さっそく買った香ばしい香りの熱々なイカ焼きをパクリ♪
「うまいな」
「うん!やっぱり、初詣後のイカ焼きは最高ですね!…あっ、でも夏の花火大会前のイカ焼きも捨てがたいなぁ…」
「どっちもいっしょだろーが、花見もイカ焼きって言うんだろ?」
何ですと?
「違うもん!花見はクレープだもん」
「…そうかよ」
「うん!」
でも、こうやって黒崎クンとイカ焼き食べれるなんて…
…幸せです。
これが…、もっと
「…よしっ!喰った!」
「えっ?!はやいっ!」
あたし、まだ半分もあるよ!
「いいって、井上はゆっくり喰ってろよ」
「でも…」
「俺、コーヒー買ってくるわ」
あたしに話しながら、公園の隅にある自販機に走っていった。
そのうちに、イカ焼きをパクリ。
「あぁう、やっぱり美味しいぃ♪」
あまりの美味しさに、残りのイカ焼きを一口でパクリ。
「もいふぃ〜♪」
お口の中がイカ祭り〜♪
最高〜
「お、井上も食べたか…って、なんだっ?!その頬袋ッ?!」
「ふぇ?」
缶コーヒーを買ってきた黒崎クンが、あたしの顔見て驚いてる…
驚きながらも、ベンチに腰かけ、缶のプルトップを開けた。
「すげぇーな……」
缶コーヒーを飲みながらマジマジと見られましても…
「井上、顔ちっせーのに頬ってそんな伸びんだな」
…照れます……
んっ、…食べたぁ〜
「誰だって伸びますよ〜」
「今のは尋常だって……、あっ、そうだ」
「?」
ダウンジャケットのポケットから、黒崎クンが何かを出して、あたしにパス。
「あったかぁ〜い」
温かいミルクティーのペットボトル。
「コレでよかったか?」
「えっ?!あたしに?」
「他に誰がいるんだよ…」
「そっか、そうだよね」
「だろ?」
「あっ?!お金っ!」
「いらねぇーって!」
「でもっ!黒崎クンの大切なお金なのに…」
「大切な金だから、井上に使うんだろーが」
「っ!!!!」
はわっ!
缶コーヒーを飲み尽くす、黒崎クン。
黒崎クン…
あなたのその不意打ちな、ときめきワードは、あたしの心をバクバクさせてヤバいんですよ…。
「…じゃあ、いただきます」
「おう」
黒崎クンの買ってくれた、ミルクティーは温かい…
「…美味しいです」
「そっか」
「…うん」
いつも賑やかな公園も、今日はお正月だから子供たちの姿もなく、とても静か。
「…ごちそうさまでした」
「…おう」
静かだねぇ…
「暖まったか?」
「うん!黒崎クンの買ってくれたミルクティーは格別に美味しくて、暖まりました!」
「そうか」
「うん!」
「…この後、ドコか行きたい所あるか?」
「ううん、特に何もないよ」
「じゃあ、ウチに行くか?」
「えっ?!」
黒崎クンのお家?
「遊子と夏梨が参拝行ったら連れて来いって」
「ほんと?」
「一緒に雑煮食べようだってさ」
「やったぁ〜〜!!」
「嬉しそうだな?」
「だって、お雑煮だよ!」
「そうか」
「早く行こう!黒崎クン!……あっ、でも」
「ん?」
「クリスマスもお邪魔したのに…、図々しいかな?」
「何言ってんだよ、呼んでるのはコッチなんだから、図々しいわけねぇだろ?」
「そか…」
「ほら!置いてくぞ!」
黒崎クンは、あたしがウジウジ悩んでるうちに、公園の出入り口まで歩いてた。
「えっ?あっ!!待ってぇ」
走って、何とか追いつく、
そして、
そこには優しい顔した彼がいる。
「井上」
「はい?」
「今度は花見だな?」
「へ?」
「今度は花見でクレープ食べような」
「うん」
あぁ、神様…
「夏には花火でイカ焼きだろ?」
「うん!」
夢のようです…
だって…、だってね。
「今年はいっぱい出かけような!」
「うんっ!」
お願い事を、彼が言ってくれたんだもん。
神様が、黒崎クンに教えたんですか?
それとも…
「黒崎クン?!」
「ん?」
「今は黒崎クンの家にレッツ・ゴー!!」
あたしの右手には、飲みかけのミルクティー。
そして、左手には大好きな彼の手…。
黒崎クン?
あなたのお願いは何でしたか?
あなたの願いと同じなら、嬉しいです。
――あなたの隣に、いられますように。――