*おはなしA*

□*あなたの隣*
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パンパン!


初詣。
あたしは、あなたの隣で、お願い事を頭で唱えます。



*あなたの隣で*




「何を願い事したんだ?」

「えっ?!」


神社の本堂で参拝をすませ、参道に並んでるたくさん出店……あまりの誘惑の多さに何を食べるか悩んでいたら、隣にいた彼があたしに話しかけてきた。


「願い事、やったら長いこと拝んでたから」

おぉ…、さすが黒崎クン

「…見られちゃいましたね…」

「いや…、隣にいるんだから、わかるよ、そんぐらい」

「……たしかに…」

「…で」

「で?」

黒崎クンの意地悪な顔。

「何をお願いしたんだ?」

うっ!
それだけは…

「い、言えません…」

「なんで?」

だってぇ

「言ったら、お願いが叶わないって聞いたもん。…それに」

「それに?」

「黒崎くんは、教えてくれる?お願い事」

「そ、そんなんいえるかっ?!

だから、あたしも意地悪な顔をした。

「でしょ?…だから、言えませ〜ん♪」

「おまえ…」

「あっ?!イカ焼き屋さんだ!…黒崎クン、イカ焼きにします!」

あたしは、イカ焼き屋さんに一直線!

「おいっ!井上!」


*******************



「おいひぃ〜♪」



参道から少し離れた公園で、さっそく買った香ばしい香りの熱々なイカ焼きをパクリ♪


「うまいな」

「うん!やっぱり、初詣後のイカ焼きは最高ですね!…あっ、でも夏の花火大会前のイカ焼きも捨てがたいなぁ…」

「どっちもいっしょだろーが、花見もイカ焼きって言うんだろ?」
何ですと?

「違うもん!花見はクレープだもん」

「…そうかよ」

「うん!」


でも、こうやって黒崎クンとイカ焼き食べれるなんて…
…幸せです。

これが…、もっと

「…よしっ!喰った!」

「えっ?!はやいっ!」

あたし、まだ半分もあるよ!

「いいって、井上はゆっくり喰ってろよ」

「でも…」

「俺、コーヒー買ってくるわ」

あたしに話しながら、公園の隅にある自販機に走っていった。

そのうちに、イカ焼きをパクリ。

「あぁう、やっぱり美味しいぃ♪」

あまりの美味しさに、残りのイカ焼きを一口でパクリ。

「もいふぃ〜♪」

お口の中がイカ祭り〜♪
最高〜


「お、井上も食べたか…って、なんだっ?!その頬袋ッ?!」

「ふぇ?」


缶コーヒーを買ってきた黒崎クンが、あたしの顔見て驚いてる…

驚きながらも、ベンチに腰かけ、缶のプルトップを開けた。

「すげぇーな……」

缶コーヒーを飲みながらマジマジと見られましても…

「井上、顔ちっせーのに頬ってそんな伸びんだな」

…照れます……

んっ、…食べたぁ〜

「誰だって伸びますよ〜」

「今のは尋常だって……、あっ、そうだ」

「?」

ダウンジャケットのポケットから、黒崎クンが何かを出して、あたしにパス。

「あったかぁ〜い」

温かいミルクティーのペットボトル。

「コレでよかったか?」

「えっ?!あたしに?」

「他に誰がいるんだよ…」

「そっか、そうだよね」

「だろ?」

「あっ?!お金っ!」

「いらねぇーって!」

「でもっ!黒崎クンの大切なお金なのに…」

「大切な金だから、井上に使うんだろーが」

「っ!!!!」
はわっ!

缶コーヒーを飲み尽くす、黒崎クン。

黒崎クン…

あなたのその不意打ちな、ときめきワードは、あたしの心をバクバクさせてヤバいんですよ…。


「…じゃあ、いただきます」

「おう」


黒崎クンの買ってくれた、ミルクティーは温かい…

「…美味しいです」

「そっか」

「…うん」


いつも賑やかな公園も、今日はお正月だから子供たちの姿もなく、とても静か。

「…ごちそうさまでした」

「…おう」

静かだねぇ…

「暖まったか?」

「うん!黒崎クンの買ってくれたミルクティーは格別に美味しくて、暖まりました!」

「そうか」

「うん!」

「…この後、ドコか行きたい所あるか?」

「ううん、特に何もないよ」

「じゃあ、ウチに行くか?」

「えっ?!」

黒崎クンのお家?

「遊子と夏梨が参拝行ったら連れて来いって」

「ほんと?」

「一緒に雑煮食べようだってさ」

「やったぁ〜〜!!」

「嬉しそうだな?」

「だって、お雑煮だよ!」

「そうか」

「早く行こう!黒崎クン!……あっ、でも」

「ん?」

「クリスマスもお邪魔したのに…、図々しいかな?」

「何言ってんだよ、呼んでるのはコッチなんだから、図々しいわけねぇだろ?」

「そか…」

「ほら!置いてくぞ!」

黒崎クンは、あたしがウジウジ悩んでるうちに、公園の出入り口まで歩いてた。

「えっ?あっ!!待ってぇ」

走って、何とか追いつく、
そして、
そこには優しい顔した彼がいる。


「井上」

「はい?」


「今度は花見だな?」

「へ?」

「今度は花見でクレープ食べような」

「うん」

あぁ、神様…

「夏には花火でイカ焼きだろ?」

「うん!」

夢のようです…
だって…、だってね。

「今年はいっぱい出かけような!」

「うんっ!」

お願い事を、彼が言ってくれたんだもん。

神様が、黒崎クンに教えたんですか?

それとも…

「黒崎クン?!」

「ん?」

「今は黒崎クンの家にレッツ・ゴー!!」


あたしの右手には、飲みかけのミルクティー。

そして、左手には大好きな彼の手…。


黒崎クン?
あなたのお願いは何でしたか?

あなたの願いと同じなら、嬉しいです。




――あなたの隣に、いられますように。――

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