*おはなしA*

□*さかさまバレンタイン*
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「井上っ!」

「ふぇ?」



放課後の学校。

部活もないし、昇降口に向かってたら、急に予想外な人に呼ばれてドキドキ。



黒崎クンが、あたしを呼んで追いかけてきてる。


「よかった、追いついた」

「ど、どーしたの?」

あたしを捜してた?

…まさかぁ

「井上」

「は、はい…」

あたしは、名前を言われるだけで直立不動。

「…井上」

「…はい?」

あれ?
黒崎クンも、固くなってる?

あたしの真似ッスか?

「井上…」

「聞いてますよ、黒崎クン」

「あっ、わ、わりー…」


………………


放課後の学校は、みんなの声でにぎやか。


なんか、あたしたちのまわりだけ時が止まったみたいだよ。
黒崎クン…。


「く…」

「目、瞑れ…」

「へ?」

「め、目だよ。目を瞑れって!」

「は、はいっ!」


急かされ、何が何だかわからないけど言われるとおりに…


「口開けて」

「へっ?!」

あなたの

「だから、口開けろって」

言われるとおりにしましたよ。



パク!

「ん!」


口の中に
クリーミーで甘いモノが入ってきた。

…これは


「…チョコ?」


「せーかい!」


なんか、一仕事終えた清々しい顔ですな…、黒崎クン。


…でも、なんで?

「くろ…」
「じゃなっ!井上!」

「えっ?…あっ、うん」

「よく味わって食えよ!」

「は、はい」

黒崎教官に敬礼!

ニコニコした黒崎クンは、そのままあたしの先を歩き出しちゃった。


あたしは…

意味が分からなくて…

「どーした?織姫?」

「たつきちゃん!?」

「そんなに驚く?」

ごめんね、たつきちゃん。
ちょっと、違うこと考えてたからビックリしちゃったの。

「……ねぇ、たつきちゃん…」

「ん?なに?」

「…ちょこ」

「へ?」

「チョコ…」

「…ちょこ?……………あぁ、チョコね!」

「うん…」

「そっかぁ、今日はバレンタインデーだもんね!」




!!!!



「なぁに?一護に渡したかったのに渡せなかったとか?」



今日って、バレンタインデーだったんだ…。

全然、忘れてたよ…。
恋する乙女失格ですな…。

せっかくの大好きな人にチョコを渡して気持ちを伝えるチャンスなの…に……って…?!




!!


へっ?




……えっ!?



「織姫?」

「へっ?」

「どーした?」

「あっ?!ちょっと違うこと考えてて…」

「違うこと?」

「えっ!…あっ、うん…、ごめんなさい!たつきちゃん!」

「え?」

「あ、あたしっ!きゅ、急用があるから帰ります!」

「うん…、…あっ!さては告白ぅ?」

「はいっ!じゃっ、たつきちゃん教官さん!さようなら!」

「ハイハイ、気をつけてねぇ〜………って、えぇっ!」


ごめんね!たつきちゃん!
最後までお話、聞かないで走り出しちゃった!


でも、今はあたしの…

格好良くて

大切で…


大好きな…


世界で一番大好きな



彼を…



今度はわたしが呼び止める番だからっ!







「く、黒崎ク〜ンっ!!!」



あたしの声に、振り向くあなたの…


あなたの気持ちは…





あたしと同じ気持ちですか?







えんど。


†*†*†*†*†*†*

「やっと気づいたか?俺の気持ち」
 

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