捧げ物
□また明日。
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「帰ろうか」
「うん」
幸村くんがさりげなく出してくれた右手に、自分の左手を重ねる。
恋人繋ぎはしない。
なんだか恥ずかしいから。
好き合ってないとかじゃなくて。
そんなのが愛だと思うのは馬鹿らしいと二人とも思ってるだけ。
「寒いね」
「うん」
「どっかでなんか買って帰ろうか」
「俺コンビニの肉まんがいいな」
「わかった、買って帰ろう」
小さく笑った幸村くんに胸がきゅんっと締め付けられつつも、コンビニへと足を進めた。
***
「ねぇ、まだ?」
「ちょ、ちょっと待って・・・!!」
幸村くんは優柔不断だ。
今も肉まんにするか餡饅にするかで悩んでいる。
・・・しょうがない。
「じゃあ私が餡饅買ってあげるから幸村くんは肉まん買えば?」
「いいの?」
「うん」
そう言えばありがとう、と言って笑う幸村くん。
つくづく私は幸村くんの笑顔に甘い。
レジの人に渡された肉まんと餡饅を半分に割って外へ出た。
***
場所は変わり私の家の前。
そこで少し止まって世間話をするのが日課だ。
「じゃあ、また明日」
そう言って家に入ろうとすれば幸村くんの手が肩にそっと置かれる。
これも日課。
二人だけの合図。
「うん」
そっと唇が重なり合って、離れた。
また明日。