短編夢置き場

□さようなら、さようなら
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『…で。お前は、犯人が誰だか目星ついてるワケ?』

『…それ、は、…』


(ねえ、君は本当に言ってしまうの?)

(オリオン。私は…自分の、記憶を信じるよ。)

オリオンの声が聞こえて、私は気持ちを落ち着けるためにすうっと息を吸った。

崖から落ちていく瞬間、自分の悲鳴だけがやけに響いていた。
次を目を開けた時に見えたのは、他でもないシンの姿だった。失った記憶の中に残っていた、唯一の記憶。


『犯人は、シン、だと、思う…』


『…そう。やっぱりそう思うんだ。』


シンの表情はやっぱり変わらなかった。眉ひとつ動かさないシンを見て、やっぱり彼に対する不信感は変わらなかった。
もし犯人じゃないのなら、慌てて否定をしたり、怒ったり、悲しんだりするだろう、と思う。



(ねえ、もう行こう?)

どうして、シンが私を突き落としたのか。それは事故だったのか。私は何かをしたのか。ナクシタ記憶の中に、答えはあるのだろうか…?

『さようなら』

このまま、オリオンと私はナクシタ記憶を探しにいこう。信じられるものは、結局、自分自身だけなのだから。
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