短編夢置き場

□星空の下でキスをして
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思い返せば一緒にいた時間はたったの3ヶ月だった。
女たらしのバイトの先輩。いつも周りに女の子達を従えている人。


でも。
イッキさんは、本当は誰より弱い人なのだ。
本当は誰より優しい人なのだ。
本当は誰より、傷付いているのだ。


そんな“本当”に私はどれくらい気付いてあげれたのだろう。
それは分からないけれど、気付いてあげれるのは…私しか、居ない。
ねえ、これは自惚れですか、イッキさん。



今、あなたは、何をして、何を、想っているの。
そんな事を思えば、ほらまた。
こんなにも、胸がぎゅっとなって、苦しくなる。
遠く離れた場所で星空を見上げるたびに、私はこんなにも、あなたを思い出しています。



ブブブ、というバイブの振動で、私はスカートのポケットから、使い慣れた携帯を取り出した。
携帯には未読受信メール。

【今度の土日ヒマ?】



そこにはイッキさんからのメールがあった。

ああ。
私はまた胸がぎゅっとなって、胸を抑えた。握りしめた服の感触よりも、胸の痛みがひどくて、
…それでも、嬉しくて。泣きそうになる。

ああ、会いたい。
たったの3ヶ月で本当に恋に落ちていたのは、私の方だったのだ。

会えたら伝えよう、離れてから気付くなんて遅すぎるよ、と笑ってくれても構わない。
構わないから、伝わったなら、星空の下でキスをして。




【toイッキさん

本文
もちろん。
今度の土日は、晴れなのできっと星が綺麗です。】







(胸が苦しくなるほど、あなたが好きです。)


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