ウイレン(アムネシア、イッキ、シンメイン☆連載中)
□世界はこのまま真っ暗でいい
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『バイトでも探してんの?』
後ろから声をかけてくるシン。シンはいつも私の背後から音を消して近寄ってくる。それが彼の意図的なものかどうかは分からないけれど、私を驚かせて楽しんでいるような気もする。
『うん、そう。』
大学の内のカフェで昼食をすませたあと、私はアルバイト情報誌を広げていた。こんなにもアルバイト募集が乗っているのに、中々思うような職場がなくて、ため息がでる。
『へえ』
シンは隣に腰かけると、私からアルバイト情報誌を取り上げ、パラパラと目を通していった。
『どんなバイト探してる?』
『時給高いとこ』
『職種は?』
『問わない、けれど週三くらいで、出来るだけ稼げるとこ。』
『こんな情報誌に載ってるとこより、時給良いバイト知ってるけど』
『え?』
『教えて欲しい?』
『うん、うん、凄く』
『じゃあメロンソーダ奢りね』
『…なにそれ、情報料?ほんとシンってそういうヤツだよね』
『まいどあり』
私は席を立ち、カフェのカウンターへと足を運んだ。
シンは変わっている。
こんな大学で私に近寄ってくる人なんてイッキュウ先輩と彼くらいだろう。
私は人付き合いが苦手だ、人間関係で頭を抱えるのもバカバカしいと思ってる。一人が寂しいとかそんな事も思わないし、自分から近付きたいとも思えない。
イッキュウ先輩はただの好奇心で私に近付いて来ているのだろうけど、シンはきっと好奇心ではない。
私を見つければ時々近付いてきて、すぐに離れてく。まるでその姿は猫みたいだ。
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