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□Sweet Dream
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息が苦しい。体も思うように動かない。
ここは、一体何処なのだろうか。
見渡す限り一面の闇で、目を凝らしてもなにも見えない。
暗闇の中に一人きりで、得体の知れない恐怖に体も心も支配されていく。
やめてくれ。もう嫌だ。
一人は嫌だ!!!
「つっ・・・!!!」
ベットから飛び起きた体は汗で軽く湿っていてとても気分が悪い。
「夢・・・か・・・」
随分と久しぶりに見た悪夢。最近は見ることも少なくなったが、昔は良くうなされていた事を思い出し無意識に苦笑いを浮かべる。
いい大人になったと言うのに未だ怯えてしまう自分が恥ずかしく、情けない。
そんな感情を振り払おうと頭を軽く振ると視界の端に細い金色が見えた。
泊まってたんだよな。
今の今まで恐怖に支配されすっかり忘れていた。
小さく丸まって子供の様な、幸せそうな顔をして眠っている最愛の人。
確か寝るときは俺の腕の中にいたはずなんだけどな。
相変わらず寝相が宜しくないようだ。上にかかっていたはずの掛け布団が大きくはだけてしまっていた。
風邪でもひかれたら困るので、掛け布団を直そうと細心の注意を、払って体を動かす。
まぁ、彼女の事だからちょっとやそっとじゃ起きたりしないだろう。
ベットが軋む音が嫌に大きく聞こえるのは気のせいか。
掛け布団を定位置に直した所で手を掴まれた。
起こしてしまったか、と少し後悔したが、それよりも何時もは何があっても中々起きない彼女が起きたことに少し驚く。
「・・・まもちゃん?」
「悪い、起こしちまったな。」
「・・・」
「まだ夜明け前だ。もう少し寝てろ。」
「・・・」
ぼんやりと薄目を開けている彼女の髪を優しく撫でてやる。
いつもならこうしてやるとまるで猫の様に気持ちな良さそうな顔をして眠りに付くのだが、何故かぼんやりとしたまま俺の顔をじっと見ていた。
「うさ?」
「まもちゃん・・・」
不思議に思った俺が顔を近付けた時だった。
背中に細い腕が回された瞬間、柔らかい感触に顔が包まれた。
「おい!うさ!」
かなり大胆な行動に戸惑い離れようとするが、更に強く抱き締められてしまう。
「おい・・・」
規則正しい心音と柔らかい体温が抵抗する力と気持ちを奪っていく。
ひどく安心感のある場所だ。
段々と力が抜けていく俺の頭を、彼女はまるで子供をあやす様によしよしと撫でる。
「だいじょーぶよ。」
「え・・・」
「あたしはずっと、側にいるから。」
「・・・うさ・・・」
心が暖かもので満たされていく。
何も言わなくても、ちゃんとわかってくれている。
完全に闇は消え去っていた。
「ありがとう。うさ・・・って、おい。。。」
少し顔を上げて彼女の顔を見ると、既に夢の中に戻ってしまったようだ。
幸せそうな顔をして柔らかい寝息をたてていた。
しかし、俺の頭を抱き締める力は未だに強いままだ。
「重くて苦しくなっても知らないからな・・・」
一人呟いて、彼女の柔らかい胸に顔を埋め目を閉じる。
もう、悪夢は見なくて済みそうだ。
徐々に遠ざかっていく意識の中で、夢の中でも彼女に会いたい。と、強く思った。
end.
→おまけ。