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□天然小悪魔
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「寒い。。。」


北風が身に染みる。この時期に公園で待ち合わせはもうやめようと心の底から思った。

読みかけの小説も、こう寒くては手が悴んでしまって上手くページが捲れない。

溜め息をついて腕時計に目線を移す。



10分経過。


どうしてこう、俺の彼女は時間が守れないんだ。

いつも何だかんだで全く怒れず、待ちぼうけを食らってきたが今日こそはしっかりと言い聞かせなければ。
甘やかすだけじゃ、彼女の為にもならないはずだ。

うん。そうしよう。


「だーれだっ!?」


何やら嬉しそうな声が聞こえたと同時に、目の前が真っ暗になる。
顔がわからなくても勿論わかる。今丁度、お前の事を考えてたんだからな。


「。。。うさ。」


覆われた手のひらを掴んでそちらを向けば、可愛い笑顔を浮かべて立っていた。


「うさ、お前はなんで、、、」


「まもちゃんごめんなさい。。。補修なかなか終らなくて。」


俺の言葉を遮って、謝罪の言葉を言うとそのままぎゅっとしがみついてきた。


可愛い。凄く可愛い。


じゃないだろ、俺!!


つい、さっき今日はきちんと叱ると決めたばかりじゃないか!


「うさ。あのな 、お前はなんでそう、、、」


「ごめんなさい。ホントにすっごく反省してる。だから、ね?まもちゃん怒んないで?」


「。。。」


「まもちゃん。。。」


「うん。。。」


「まもちゃん、大好き!!」


更に強くしがみついてくる彼女を抱き締める。

本当に彼女には敵わない。

内心悔しいが、たかが10分遅れただけだしな、と自分を納得させた。


「まもちゃん、手が冷たいよ!ココア飲みたい!」


「家まで我慢しろ。」


「えー!けちー!」


ぐずる彼女の手を取って、着ているコートのポケットに突っ込む。


「これで寒くないだろ。」


「。。。まもちゃん、可愛いー!」


キャッキャと喜ぶ彼女を横目に、俺は赤くなった顔を見られないようにして歩きだす。

本当に彼女には敵わない。色んな意味で。

そう心の底から思った。




end.

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