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□大切なもの。
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世界中で喧嘩をしないカップルなど存在するのだろうか。
どんなに仲が良くても喧嘩の一つや二つするだろう。
勿論、このカップルも例外ではない。
「まもちゃんのバカ!」
「だから謝ってるだろ!」
「知らない!知らない!知らない!」
事の始まりは本当に下らない事だった。
うさぎが楽しみにしていたシュークリームを衛が食べてしまった。ただ、それだけだ。
何時もなら少し拗ねるだけで、喧嘩に発展などしないのだが、今日はうさぎの虫の居所が悪かったらしい。
なかなか機嫌が治らなかった。
最初は悪いことをした、としきりに謝っていた衛も、なかなか機嫌な治らないうさぎに痺れを切らしつい、口答えしてしまい収まるどころかヒートアップしていった。
「もう、いい!まもちゃんなんて知らない!」
「だから、謝ってるだろ!?」
もう何度目の同じ様な言い合いをしたのかわからなくなってきたとき、リビングのドアが開き良く知った女の子が顔を覗かせた。
「何騒いでるの?」
「ち、ちびうさ!」
二人のいつもとは違う雰囲気に少し不安げな顔を見せる。
さすがに未来の自分達の子供に喧嘩してました。とは言えず、二人とも黙ってしまう。
「・・・」
そんな二人の様子から敏感に何かを感じ取ったのか、ちびうさは少し怒った顔をして二人に近づいてきた。
「ち、ちびうさ?」
「どーせ、うさぎがなんか食べ物取られたー!とかで拗ねて喧嘩になったんでしょ!?」
「うっ・・・!」
図星すぎてまともに反論できないうさぎに更に畳み込む様に追い討ちをかける。
「うさぎいま何歳!?高校生になったんだからもうちょっと大人になりなさいよねっ!」
「だってぇ〜・・・」
未来の自分の娘に言われ放題言われ、情けないことにうるうると涙を浮かべるうさぎには目もくれず、今度は衛の方に視線を向けた。
今までのうさぎへの攻撃に唖然としていた衛も何故か姿勢を正し、ちびうさへ向き直った。
「まもちゃん!」
「・・・はい・・・」
「うさぎが食い意地はってんのよぉぉぉくわかってるわよね!?食べちゃったまもちゃんも悪いんだからね!女の子にとって甘いものは特別なの!そこんとこ忘れないで!」
「ごめんなさい・・・」
「もう、ホントに二人ともバカなんだから!」
『ごめんなさ・・・』
自分達の娘に散々怒鳴られさすがに恥ずかしくなった二人が同時に謝ろうとした時だった。
「そんでもって!早く仲直りしてよ・・・」
先程の剣幕はどこへやら、か細い声でそう言うと、うつ向いてしまった。
そしてすぐに、ぽたぽたと小さな雫が落ちて床を濡らしていく。
「ちびうさ・・・」
「うさぎのばか・・・」
「ごめんねー。よしよし、ほら、泣かないの。」
「う〜・・・!」
「悪かったな、ちびうさ。」
「まもちゃんもバカー!」
「本当だな。。。」
うさぎに抱き締められ、衛に頭を撫でられたちびうさは安心したのかそのまま眠りについてしまった。
その様子をみて二人は顔を合わせて微笑み、思い出したかの様に顔を少し赤くした。
「まもちゃん、ごめんなさい。」
「いや、俺も悪かった。ごめんな。」
「それにしても・・・」
「うちの子供は」
『本当に可愛い!!』
end.