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□Conflict
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「ほら、早く入れ。」


「うー。ちべたい・・・」


小犬のようにブルブルと頭を降る彼女に近場にあったフェイスタオルを投げて、早く水滴を拭くように促す。

ありがとう、と、小さく笑ってそれを受けとる彼女から窓に視線を移すと、雨は更に強くなって激しさを増していた。

待ち合わせた時は晴れてたのに。
いきなり降りだした雨のおかげで今日の放課後のデートはいつもの様に家で過ごすことになりそうだ。



「すっごい雨だねー。」


「あぁ、そうだな。」


「ここんとこいきなり雨降るね。」


「季節柄、仕方ないのかもな。まぁ、すぐ落ち着くだろ?」


「うん、そうだといーなぁ。」


心底残念そうな声で話す彼女を慰めようと、窓から再び視線を向けて驚いた。
良く見れば、彼女は上から下までびっしょりと濡れていた。

濡れないように、庇って自宅まできたつもりだったが、あまり意味がなかったようで制服からぽたぽたと雫が落ちて床を濡らしている。
フェイスタオルだけでは追い付かない、そう判断した俺は慌ててクローゼットからバスタオルを取り出して彼女に押し付けた。


「風邪ひくからシャワー浴びてこい。」


「えっ!」


「そんな濡れたままだと確実に風邪引くだろ?」


「・・・」


何やら恥ずかしげにもじもじとしている彼女を安心させるように頭を撫でてやる。


「別に変な意味じゃない。本当に風邪ひかれたら困るし、制服も乾かさないと、家に帰れないだろ?」


「・・・う、うん。」


「ほら、早くしろ。」


「ありがと、まもちゃん・・・」


彼女がバスルームに入ったのを確認してから自分も濡れた制服を脱ぎ捨て、デニムとシャツに着替えた所で彼女に着替えを渡すのを忘れていた事に気が付いた。
確か置いてあったパジャマがあったはずだ。
急いでクローゼットを漁るが見当たらない。

そう言えば、今日の朝洗濯したんだっけか。

この雨では乾くどころか再度洗濯になるだろう。
ため息をついて、俺は適当にシャツを持ちバスルームへ向かった。


この、特に気にせず手に取ったソレがこれから俺を悩ませるなんて誰が想像できただろうか。
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