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□黒猫の災難
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人間という生き物は恥を知らぬ生き物なのかしら。



ふかふかのクッションに体を沈めながら、黒猫は呆れた顔を見せそんな事を思った。


目の前には黒猫の前世からの相棒(もといお守り役なのだが)が、これまた前世からの恋人とソファに座ってイチャイチャと何やら楽しげに過ごしていた。



「でねー、それでねー!」


「うん。」


こちらが聞いていてもくだらないくらい、内容がない話でも、彼女の恋人は嬉しそうに話を聞いている。
そして話を聞いているだけではなく、時々髪を撫でてみたりだとか、オデコにキスを落としたりだとか、見ている方が恥ずかしいくらいイチャイチャ、イチャイチャ。
そんな二人を見ると最近何故かイライラしてしまう。

しかし、悲しいかな、こんな光景は日常茶飯事で最初の頃は顔を赤くして見ることも出来なかったが、今となっては当たり前の光景として納得してしまう自分がいた。


内心呆れてはいるが、前世の事を考えれば今現在の二人の行動は仕方ないのかもしれないと、自分自身を納得させ、昼寝でもしようかと背中を丸めた。






「あ・・・も、だめだってば・・・」


「なんで?」


「なんでって・・・まだ、明るいし・・・」


「関係ないよ。」


「あっ・・・まもちゃ・・!」


夢のなかへ旅立とうとした正にその瞬間、甘い声が耳に入り、意識は一気現実に引き戻された。

勢いよく視線を向ければ縺れ合う様にソファに倒れ込む二人が目に入った。



「あんたたちー!!!!なぁぁにやってんのー!!!」


思わず反射的に怒鳴ると、二人は顔をこちらに向けて気まずそうに笑う。



「あ、あはははー!ルナいたんだっけ!」


「あ、あぁ、いたんだよな。」


「最初っからいたわよ!!!全く失礼しちゃうわ!ちょっと二人とも!今日と言う今日は言わせてもらうわよ!」


今の今まで自分の存在を忘れ去られていた事も引き金となって、怒りがピークに達してしまい、二人を引き離して正座をさせる。


「全く二人とも!恥を知りなさい!」


「?」


「・・・すいません。。。」


残念ながら相棒は意味が全くわかっていないようだが、相手は意味を理解してくれた様でバツの悪そうな顔を見せる。


「本当にまもちゃんまで!うさぎちゃんのことになると本当にダメなんだから!」


「ルナー、なんでそんなに怒ってるのー?」


「・・・あのねぇ!!うさぎちゃん!」



「ルナ、最近はつじょーきなの?」




「!!??」


お説教をしてやろうと開いた口は、パクパクと魚の様に動き、思うように言葉が出てこなかった。


「おまえ、どこで覚えてきたんだそんな言葉・・・」


「えー?だって美奈子ちゃんに、最近ルナがよく怒るって話をしたらそれは、はつじょーきだーって。」


「・・・本当に美奈はろくでもない事を教えてくるな・・・」


「アルテミスと上手くいってないんじゃないかなーって言ってたよ。」


「・・・」


「あ、ちなみにオトコノコは毎日はつじょーきだって言ってたけど、まもちゃんも、はつじょーきなの?」


「・・・あのな、美奈の言う事は基本信じるなよ?言葉の意味をわかってないんだから。多分。そしてそんな言葉、人前で使うな。オマエも意味わかってないだろ・・・」


「えー?なんで?ねー、ルナ違うの?」



「ち、ち、違うわよ!!!大体、アタシとアルはそんなんじゃ!!」



「またまたぁ!未来ではダイアナって子猫生んでるくせにー!照れなくてもいーじゃない!?」


「そ、それは!」


「やっぱりルナ!そうだったのね!アルテミスのとこ、行ってきたら?」


「えっ、ちょっと!」


「あぁ、そうだな。ルナもたまにはアルテミスに甘えてみたら?アイツ、喜ぶぜ?」



「だーかーらー!まもちゃんまで!ていうか、私を追い出そうと思ってるでしょ!?」


「!!!いや、そんな事はないよ。うん、断じてない。神に誓ってない。うん。」


「嘘よー!まもちゃん!さっきの続きしたいんでしょ!?」


「んもぅ、まもちゃんに当たらないの!テレちゃってもー!!ほら、いっといでー!」


抱き上げられてあっという間に玄関まで連れてこられ、半ば強制的に外へ追い出されてしまった。



「んじゃ、ルナ!頑張ってね!」


「車に気を付けろよな。因みに追い出した訳じゃないからな。本当だぞ。」


二人に笑顔でそんな事を言われ、扉を閉められてしまい、その場にため息をついてしゃがみ込む。


「私には発情期なんてないわよ!!!」


声を荒げても時既に遅く、あのバカップルに聞こえる筈もなく。


自分の声ががらんとした廊下に響いただけだった。


「あぁ、もう本当に疲れたわ・・・」


諦めてどっと疲れが出た体を引きずるように歩き出す。


「仕方ないわね、行くところもないし、邪魔者はご希望通り行ってあげるわよ。。。」


それにしてもあの二人は、前世から私を困らせてばかりなんだから。


まぁ、そんな事で悩めるなんて平和って事よね。


二人が幸せならそれでいいのかも知れない。


二人の幸せそうな笑顔が頭を過り、思わず笑ってしまう。

そして、何故だか白い猫の顔が頭に浮かんだ。



別に、アルとはそんなんじゃないんだから。

ただ行くとこがなくなったから行くだけよ。



「それにしても・・・私には発情期なんてないんだから!うさぎちゃんてば絶対意味わかってないわ!」




end.
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