shortdream

□桜咲き誇る
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僕には幼馴染みの女の子がいた。

その子は僕より一つ年下で、妹の様に可愛いがっていた。

桜が咲き誇る四月…僕は君を想う。



「そーじ!かくれんぼしよ!」

『うん、いいよ』

「じゃあそーじが見つけてね」

『わかった。それじゃあ三十数える内に隠れてね』

「うん!」

かくれんぼが始まった。


かくれんぼって二人でやるものだっけ?

まぁいいや、三十数えよう。

『いーち、にーい、さーん……さんじゅー』

さあ何処に隠れたのかな?

あの子はいつも大きな木の後ろに隠れるんだよね。

『見ぃつけた!』

やっぱりいた…と思ったらそこには誰もいなかった。

(あれ?おかしいな)

僕は手当たり次第に探した。

『…うっ…』

一人取り残された。


涙が目からこぼれたとき・・・


「あっ!そーじ!」

大きく手を振って僕の何処に走ってきた。


・・・よかった・・・


『何処にいたんだよっ、探したじゃないか』

「ごめんね…。そうだ!これあげるね」

手にはきれいな桜のつぼみを持っていた。

どうやら、かくれんぼの途中にこれを見つけてかくれんぼのことを忘れていたようだ。

『ありがとう。きれいだね』



桜が咲き誇っていたある日

僕はお使いに行くことにした。

(余ったお金で金平糖を買おう)

そしてあの子と一緒に食べよう。

『ただいまー』

家の中では姉さんが暗い顔をしていた。

「総司、よく聞いて…お隣の子が引っ越したの」
…え…

『嘘だ…冗談だよね』

嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ

「本当よ」

『そんなことない!』

姉さんが何か言っていたけど僕の耳には入らなかった。

急いで隣の家に行った。
ドンドンッ

『こんにちはー、僕だよ。遊ぼう』

ドンドンッ

『ねぇ…居るんでしょ…入りますよ』

「総司!駄目!!」

ガラッ

僕は呆然と立ち尽くした。

そこには一面の






赤。



その後のことは覚えていない。

今となってはあの頃が夢のように思える。

否、夢だったかもしれない。

ただ僕は君を想う。

幼かった頃のいとおしい日々————。

さぁ、巡察に行くか。

—そーじ!遊ぼう!!—

ふと僕は桜を見上げた。
 

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