長い物語
□昼下がり
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「君、前から思ってたけどお洒落だな」
「そう、ですか?」
そう言った切嗣はいつも身に纏っているよれよれのスーツ姿だった。
この2人が買い物に行って以来、「あまり2人で出掛けないように」とアイリスフィールが決めたため素直にそれに従うこと2週間。
今日は私用で街に出た綺礼を彼の師である切嗣は跡を追ったのだ。
「ところで、切嗣師。2人で出掛けぬようマダムが仰っていたはずですが…」
「帰りが遅くならなければいい話さ。それに今日は“たまたま”出くわしたんだ。本当、綺礼は真面目だね」
そう言ってくすりと珍しく切嗣は笑った。
たまたまとは嘘である。
アインツベルンの城からこっそりではなく堂々と綺礼の跡を追っていたのだから。
そんな彼に綺礼は少しため息を漏らした。