LOVE

□アザ
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疲れて眠いのにそれでも眠りにつけない。
苛立ちと不安がいっぺんに押しかかる時がある。

日に日に酷くなって

あまりに苦しくて、自分の首に手をかけた。












「兄、貴」


ビニール袋がぐしゃりと音を立てる。


「・・・また、やったの」


冷たいフローリングから暖かい胸の中へ。


「何か喋ろうよ」


病人みたく重い体は
自分のなすがままに大人しくいてくれる。

けれど、アンタと話がしたいんだ。


「昨日、友達のアクセサリーデザイナーと久々に会ってさ」


どんなに楽しい一日でも
どんなにツライ一日でも

アンタがいりゃ、それでいいんだ。


「兄貴の好きなもん買ってきたよ。一緒に食べよう」



そんな苦しげに俺に縋らないで。

頼むから笑ってとは言わないから。

ただ、元気でいてください。





ここに来てもう3時間になる。



「キリト」


「信也」


「兄貴」


「兄ちゃん」


「おにぃ」


どんなに呼びかけても、どんなに動いても
どれ一つ反応をくれなくて。


「・・・今日はもう寝ようか」


随分と小さく感じる体は、抱き上げると子供が駄々をこねる見たく胸にへばり付いて唸る。

寝室にに着いても離れようとせずに。

声をかけると大人しく顔をあげるが、
表情は酷く歪んだままで。

終いにはいやだいやだと暴れだす兄を力でベッドに押さえつけて、俺はそばで眠るまで付き添う。


「お疲れさま。おやすみ」


目を見つめ、手を握り、頭を撫でて

ようやく、彼は眠りにつく。



目蓋が落ち、静かな呼吸音を確認すると全身の力が抜けた。

兄のベッドのすぐ下で眠りにつく直前に
異常も何も連続そして持続すれば麻痺するのだと今さら気づいた。



(・・・それでも俺は、アンタに繰り返し言い続けるよ)










「おはよう」


2人なら、どんな終末だって大丈夫だと思えるから。



end

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