TOA1

□カミングアウトは計画的に
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 思わぬ闖入者の登場に数秒呆気にとられていたモースであったがすぐに気を取り直し、まくし立て始めた。

「……フン、六神将ごときが馴れ馴れしい! だいたい、貴様が惑星預言を知るはずがなかろう? 何処ででっち上げたかは知らんが――」
「親切心で第七譜石の預言を詠んであげたっていうのにつれないね。これだからキツネ目預言馬鹿なタヌキ親父は嫌いなんだよ」

 本気でとっとと罷免しとくべきだったかも。
そう心底嫌そうに呟いたシンクへ異を唱えたのはアッシュだった。

「……お前な、今更それ言うか? 俺が散々、モースは早々にどうにかしといた方がいいって言ったのに『あの預言馬鹿が絶頂に登り詰めたところを叩き落すのが楽しいんじゃないか』なんて言って却下しまくったクセに」
「今のはただの愚痴。……ま、半分は本気だけど実行するつもりは無いよ。じゃなきゃ何のためにこの二年間、髭の部下なんて地位に甘んじてたと思ってるの? すべてはこの瞬間のためさ」
「……俺はてっきり、お前がアリエッタと一緒に居たい一心で六神将やってたんだと思ってたけど」
「そんな当たり前のこと言うまでも無いだろ」

「もしかして師匠とモースに一泡吹かせるのは……物のついで?」
「それこそ言うまでも無いね!」
「いやいや、普通に前の発言と矛盾してるだろっ。全部はこの瞬間のためじゃなかったのかよ!?」


「貴様ら! このワシを無視するな!!」

 ディストにラルゴなにをボサッとしている。この不届きな輩どもをサッサと片付けろ!!

 怒り絶頂のモースは手持ち無沙汰に年少組の掛け合いを眺めていた二人を微笑ましそうに眺めていた――どこか間違っているが、彼らにとっては日常の微笑ましい光景に見えていた――二人の六神将へ怒鳴り散らした。二人は明らかに面倒くさいといった態度を隠しもしなかったが、一応名目上では上司のそのまた上司の命令である。嫌々ながらも各々戦いのために武器を構え、あるいは譜業を起動させる。

 一触即発。
そんな所にライガとその背に乗っていたアリエッタが俊敏な身のこなしで両者の間へと割り込んだ。

「いくらモース様でも、この方に手を上げることは許さない、です!」

 普段の気弱な表情などおくびにも出さずキリリと宣言するアリエッタ。だが、

「黙れっ、魔物ごときに育てられた野蛮人が!! このワシに逆らうなど躾が足りぬようだな」

 放たれたモースの暴言。
 即座にライガが威嚇から獲物を仕留めるための体勢へと切り替え、シンクは戦闘態勢に入り、アッシュは「……うっわー、あの預言馬鹿。よりにもよって一番アレな地雷踏みやがった」と呟いた。もちろんアッシュとてアリエッタを妹分として可愛がる身。今の言葉で頭に血が上ったのは自覚していたが、ヤツに手を下すのは自分の仕事ではないと言い聞かせる事で何とかモースに斬りかかるのを堪える。

 隣にいるイオンが十字を切ったのはもちろん見なかったフリ。


「――モース。生まれたことを後悔したことはあるかい?」
「グルルゥゥ」


 ライガとシンクがモースへと詰め寄る。仮面に顔の大半を隠されていても、シンクがにっこりと笑顔と青筋を浮かべたのをこの場の誰もが悟った。もちろんソレを向けられたモースも。




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