TOA2

□紅いチーグルのいない風景
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「あれ、アッシュ。ライの姿とか見えねーけど何かあったのか?」
「出会い頭に何ワケのわかんねぇ事をほざいてやがる、屑が」



 罪の意識に耐えかねてついにイカレやがったか。なんて嘲るアッシュにルークは顔をしかめた。罪の意識って何だよ、と。何かヘマをした覚えなど、とんと心当たりが無い。敢えて挙げるなら先の擬似超振動云々の件くらいなものだが……。

「お前こそ何ワケのわかんねーこと言ってんだよ。マルクトに跳ばされた件なら俺に非は無いって事で合意したはずだろー? てか、本気でライのヤツどこに行っちまったんだよー……」

 途方に暮れつつ紅いチーグルの姿を探して視線を彷徨わせたが、目に映る紅は目の前に立つ同位体の流れるような長い髪だけ。チーグルならば自分の肩に一匹乗っていてキョトンと首をかしげているが、何度見直しても蒼いまま。紅いチーグルなど何処にも見当たらない。

「ライさん、いないですのー?」
「あ、もしかして。アッシュのヤツ遂に愛想つかされたとか?」
「みゅぅ、そういえばライさんつねづね言ってたですの! 『これは明らかに虐待だーっ、我々はチーグル虐待を行うヤツらに断固抗議するーっ、主に特務師団とかで師団長してる六神将とか赤毛とかっ!』って」
「思いっきり相手特定してんのな」
「『良い子だと思ってた某ファブレさんちのおぼっちゃんも、所詮はあの赤毛と同類っぽいから一緒に抗議運動しようぜ』ってボクも誘われたですの」
「…………で、お前それに何て返したんだよ」
「ていちょーにお断りしたですの! ご主人様のはあいじょーひょうげんだから、ぎゃくたいじゃないですのって!」
「…………あー、その………俺が悪かった」



「……お前ら。さっきから何の話をしている?」



「何……って、お前ほんとにライの事忘れちまったのかよ……?」
「アッシュさん、ライさんのこと忘れちゃったですの?」

 あり得ない。アッシュはいつもライをぞんざいに扱っていたけれど、この七年間ずっと共同生活をしてきたという事実が示すのは彼らの関係は悪いものではなかったという事。ルークにしてみれば二人は相棒と呼んでも差し支えの無い関係のはずなのに、今のアッシュはどうだ? 欠けている者がいると言うのにそれが当然であるかのようにふんぞり返っている。

「――もしかしてお前、記憶喪失になっちまったとか!?」
「今のやり取りでどうしてそんな結論に至るんだ貴様は!」




携帯ページに拍手文あげるの忘れてました……ので今更こっそりアップその2。
「紅チーグル」のルーク&ミュウvs「あしたのために」アッシュという異色の対決。しかもアッシュは「明日はどっち?」直後で激機嫌悪かったりするので、あるイミ最悪のご対面。


2007/11/26 web拍手にて公開
2008/09/23 PC版ページで再録
2008/05/25発行「異文化交流」に加筆修正で収録

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