TOA2

□ドキドキ☆ロシアンルーレット
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*2008/1発行予定の再録本に収録予定「廻る刻」の一部抜粋です。
*現代パラレルと見せかけたナニカ。
*しかしルークはゲーム本編ルークという不思議なブツ。
*ちなみにルカ=長髪ルーク(もどき)


□ドキドキ☆ロシアンルーレット□


「今日のお弁当も腕によりをかけましたのよ。さぁ、存分に召し上がりになって!」

 そう言ってナタリアがお重を開いていくと、大勢で食べることを念頭に置いた弁当がシートいっぱいに広がる。形の良いおにぎりの詰まった一の重に始まり、おかずの定番たまご焼きにから揚げ、他にもいろいろ取り揃えられてあった。

 見た目はとてもおいしそうに見える。『いつものナタリアの料理』とは正反対に。

 だが騙されちゃいけないとルークは思った。世界が違うっぽいがナタリアは『ナタリア』なのだ。おいしそうな外見に惹かれて口にした途端……なんて最悪の事態も考慮しておくべきだ。だがそんなルークの心配をよそに、気軽な感想をもらす物もいた。

「おっ。相っ変わらず、うっまそーだな」
「当然ですわ。私を誰だとお思い?」

 ルカの褒め言葉に気を良くしたナタリアがふふんと胸を張る。

 ……その根拠の無い自信を溢れさせる様もホント、俺の知ってる『ナタリア』そのものだよなぁ。

 そう思わせられるからこそ余計に不安は募る。そして――

「そりゃ、ナタリア様様に決まってるっつーの! ……んじゃ、早速」
「ちょ、おい、ルカ!?」

 ルークの制止も間に合わず、ルカはから揚げをひょいっと一つ摘んで口に運ぶ。そしてモグモグとゆっくり咀嚼して飲み込んだ。

「ん、美味い。ナタリアのメシはホントうまいよなー」
「ナタリアが作ったんだ。当たり前だろうが」

 予想に反してルカは何の異変も起こさなかった。

 よもや時間差攻撃か!? だが訝しむ間もなく、舌鼓を打つルカを横目に今度はアッシュが無防備におにぎりを口に運ぶ。

 ……やはり異変は起こらない。

「じゃ、あたしたちも遠慮なく」
「いっただっきまーす!」

 続くようにアニスとフローリアンの手も重箱へ。シンクは「ちょ、二人とも遠慮ってモノを知らないわけ!?」とかアニスたちを嗜めながらもちゃっかり自分の分を確保。それをあざとく見つけたアッシュが「シンク、お前の言葉そっくりそのまま返してやる」とか額に血管を浮かせていたり。その内情を言葉にするならアレだろうか「あまりガツガツと食うんじゃねぇ! ナタリアの料理は全部俺のものだ!」というところか。

 どんだけ独占欲が強いんだよ。……まぁ、アッシュのナタリアに対する執着の強さは知ってるけど。

 多少呆れの入った感想を抱きつつ、根本的な所で変わらない面々を見る事ができて少しほっとしたルーク。少しでも歯車が狂っていたなら『あちら』でもこんな光景を見られたかもしれないのだと思うとチクリと胸が痛んだが。

「あら、ルークもイオンもどうなさったの? 沢山あるのですから遠慮はいらなくてよ?」

「あ、いや。俺、見てるだけで胸がいっぱいというか……」
「僕は持参したお弁当がありますから。それに僕までご相伴にあずかってしまうとアッシュに悪いですし」

 ちょこんと膝の上に乗せた弁当箱を指して申し訳なさそうに言うイオンに、ナタリアは「残念ですけれどそれならしょうがありませんわね」とそれはもう残念そうな顔をしたのだった。





 いままでさんざんパラレル書いてたのに、はじめて書いた現代パラレルっぽいもの。
 なぜか普通に短髪と長髪が双子でアッシュが長兄だったり、ルークとティアが同級生だったり、ヴァン師匠が体育教師だったり、ウパラさんが学園長だったり(でも出番無し)、ジェイドが保健医だったり(しかしながら出番が――以下略)、ガイの出番が絶望的だったりする話です。
 
2008/11/18公開 PC版拍手と共用
 

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