TOA1

□未来は終わらない
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 小規模ながらも原因不明の地震が起こったのはロニール雪山のパッセージリングの操作を終えた直後のことだった。それに何か思うところでもあったのかジェイドがなにやら考え込んだ後、少々気になる事がありますとリングを調べ始め、他の仲間たちは特にすることもなく小休止していたのだが……

「皆さん、少しよろしいですか?」

 ジェイドが仲間たちを呼び集めたのは、少しばかり時間が経った後のこと。

「大佐、何かわかったんですか……?」

 ティアが不安そうに問う。これまでの経験上、ジェイドが気になる事があると考え込んだ時に限ってロクでもないことが進行していることが多い。彼女が不安になるのは無理も無かった。

「ええ。少々のっぴきならない状況になりました」
「……さっきの地震と何か関係があるのか?」


「パッセージリングの性質を逆手に取られてしまったようです。ヴァンがパッセージリングを遠隔操作しているらしく、アブソーブゲート以外の外殻が崩落する恐れが出てきてしまったんですよ」

  困ったもんです、あっはっはっは。

 もはや定番になりつつある全く困ったように見えない態度で状況を説明するジェイドに、真面目なティアがすかさず声を上げた。

「大佐っ、それは笑いながら言う事じゃないですっ!!」

 しかし彼は悪びれもせず、おやおやいけませんねぇと親が子を諭すように告げる。

「ティア。いついかなる時も余裕を忘れないことは軍人として大切なことですよ?」


「旦那は余裕を持ちすぎだと思うんだが……」
「大佐が余裕の無い表情してるトコなんてあんまり見たコト無いしねー」

 しかもさ、大佐のことだからいきなり六神将とかが襲ってきても顔色一つ変えなさそうだよねー。なんてアニスが冗談めかして言ったのだが、実際にそんな事が起こったら本当に言葉通りになりそうだとこの場の誰もが確信していた。

「……ですが、それは仕方が無いのではないでしょうか。大佐の立場上そう容易く動揺を表情に出すわけにはいかないでしょうし」
「そうですわね。上に立つ者が動揺すれば自然とついて行く者たちにも伝わりますわ。そうなれば本来なら上手くいく事も失敗する可能性が高くなってしまいますもの」

 それでも一応、人をまとめる立場にあるイオンやナタリアはフォローを忘れない。特にナタリアの言には実感がこもっているようだった。

「ナタリアと導師の言う事ももっともだが、あの野郎いつもスカしてやがるのが気にくわねぇ。一度でいいから一泡吹かせてやりてぇモンだな」
「アッシュ。お前は時々、えらく自然に命知らずな事を言うよなぁ」
「まぁ、アッシュってば天然だし?」
「フン。お前らは一度でもそう思わなかったと断言できるのかよ?」

 開き直ったとしか思えないようなアッシュのセリフにアニスもガイも絶句する。共に行動するようになって早数週間だというのに、このデコッパチはまだ死霊使いネクロマンサーへ正面きってケンカを売る事の愚かさに気付いていないのかと。




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