TOA1

□七番目の子守唄・後編
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 ――その日見た夢はいつもとは違っていた。




「にいさんっ。わたしにいさんのうたがききたいっ」

「歌か……。何を歌ってほしい?」


 弾む声でせがんだのは幼いティアで、応じたのはまだ歳相応に見える少年のヴァン。それはまだ幼い兄弟がユリアシティで暮らしていた頃の光景だった。


「いつも、ねむるときにうたってくれるうた!」


 その答えに苦笑するヴァン。彼女がせがんだのはいつも決まって同じ歌だったからだ。遠い先祖の残した契約の証たる歌。これも次代に歌を伝えようという血のなせる業なのかと、そして果たして歌がティアより先の子どもたちへと伝えられる事はあるのかと。密かに守り継がれてきた預言から、そう遠くないうちに滅びがやってくることを知っていたヴァンはそんな事を考えていたのかもしれない。


「そうか。ティアはあの歌が好きなのだな」
「うんっ」



 けれど今だけは純粋にティアのためだけにその歌を歌ってくれた。



 レィ ヴァ ネゥ クロア トゥエ レィ レィ ――



 歌は幼いティアが眠りにつくまで何度も何度もループする。



 その果てで――



「歌はいつもお前と共にある。それを忘れなければ――」





 やさしく告げる兄の声を聞いた気がした。先に続く言葉はどうしても聞き取れなかったけれども。




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