TOA1

□なにこれ3
1ページ/9ページ





 ケセドニアへ向かう連絡船キャツベルトへ乗り込み、航海が始まって数日。最初のうちこそ初めて見る海を凝視していた長髪ルークだったが、しばらくするとそれにも飽きてしまい船室に閉じこもっていた。だが、隣室より延々と聞こえてくるうっとおしい呻き声に――誰が何をしているのかなんて誰に聞かなくても判ったし、詳しく知りたくも無い――さすがに辟易した。そんなわけで陰鬱になりかけた気分を切り替えようと甲板に出た彼を襲ったのはいつもの頭痛。

《――やっと……捕らえた》

 ――否、いつもとは微妙に異なっていた。いつもならば何を言っているのか聞き取れない幻聴なのに、今日に限って一言一句ハッキリと聞き取ることができる。その上、体の自由が全くきかなくなりルークは慌てた。

「かっ、体が……!」

《――お前の力を見せてみよ》

  そんなルークの様子など歯牙にもかけず声は淡々と響くのみ。そして声に従うかのようにルークの右手が勝手に持ち上がる。

「なっ、んなんだよっ、これ!」

 その手のひらに何か大きな力が集まっていくのが譜術に疎い彼にも判った。それは明らかに破壊の力。

「体が勝手に――ッ」
「ごっ、ご主人様っ、第七音素がいっぱいですのっ、止めないときっと痛いですの!」
「体の自由が利かねぇって言ってんだろーがこのブタザルッ! だいたい止め方なんてわかんねっつーの!!」

 急激な音素の増加を察知したのか一緒にいたミュウが本能的な危機感から声高に叫んだが、自由の効かない長髪ルークにはなすすべが無い。

「みゅぅぅぅっ。たいへんですのっ、誰かご主人様を助けてですのっ!!」



.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ