TOA1

□なにこれ4
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「ルーク!」

 城の入り口で、名を呼ばれたルークが振り返るとそこにはナタリアが立っていた。

「私も連れて行ってください!」

 何処に? とは問わない。なぜなら長髪ルークが親善大使としてアクゼリュスに向かうようにとの命を受けた時にナタリアもその場にいたし、その時にも同じことを王に懇願したがそれが聞き入れられる事は無かった。しかし正義感が溢れ自らの意思を貫き通そうとする彼女のこと、そう遅くないうちにこうなる事は長髪ルークにさえ容易に予想できた。

「駄目だっての」

 横から無言の圧力をかけてくる過去ティアの視線を受けるまでも無く、返す答えは決まっていた。ちなみにジェイドの方からは何も無いのが少し怖い。これはアレか? 俺のことを信用してますっつーポーズか? それとも単にナタリアの説得が面倒くさいだけなのか? どっちにしろ俺に面倒なこと押し付けやがってこの鬼畜眼鏡! 様々に入り乱れる内心の困惑をなけなしの自制心で飲み込んで――バチカルに帰るまでに身に付けざるを得なかった処世術だ――長髪ルークはナタリア説得にかかった。

「お前わかってんのかよ? 今のアクゼリュスは――」
「湧き出す瘴気のせいで障気蝕害におかされ動くこともままならない民たちが救助を待っているのでしょう?」
「言っとくけど親善大使に任命されたのは俺だぞ? お前が行く必要ねーじゃん」
「必要があるとか無いとかそんな問題ではありません! 苦しんでいる民がいると判っているのに何もしないだなんて王族として――」
「今回行くのってマルクト領らしいから王族とか関係ねーと思うけど?」
「そっ、それはそうですけれど……国が違えど苦しんでいる人々を放っておくことなど私には……!」

「……ちっ、しゃーねーなぁ」
「それでは連れて行っていただけるのですね!?」

 長髪ルークは不承不承といった風だったが、自らの要望が聞き入れられてナタリアの顔が喜びに綻ぶ。だが纏まりかけていた話に待ったをかける者が。

「ルーク! そんな勝手なこと――」
「じゃあ、ティア。お前ナタリアを説き伏せられる自信があんのかよ?」
「……っ」

 無理そうだった。僅かながらも垣間見た彼女の未来を思い出すと説得は無理っぽい。きっと先に根負けしてしまう。

「ティア、貴女の負けですよ。それに彼女のことですからここで断っても後でこっそりついて来るに決まってますし」

 それならば最初から目に付く場所にいてもらったほうが楽ですとジェイドの目は語っていた。そうしてナタリア・L・K・ランバルディアの同行が決まったのだった。



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