TOA1
□鮮血と公爵子息と紅いチーグル
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「それよりも、ついに2018年になっちまったな……。いつ預言が実行に移されてもおかしく無ぇ。変わったことは?」
「特にはないなぁ。ヴァン師匠も父上や叔父上だって普段通りだ」
「……そうか。ところでヴァンのヤツにバラすなんて阿呆なマネしてねぇだろうな?」
「その辺は大丈夫。ヴァン師匠は最初っから俺のこと見下してるっぽいから気にも留めてねーし、父上なんて顔を合わせる機会がそもそも無いからバレようがないだろ」
例えヴァンにバレたとしても「全てを知った所で出来損ない如きに何ができると言うのだ」なんて開き直られた挙げ句、鼻で笑われる光景が容易に浮かんでくる。格別慕っていたというわけでも無いのだが想像とはいえ自らが蔑まれる光景を思い描くのは精神衛生上よろしくない。そんなわけでルークは別の事項に思考を移そうとしていたのだが、ふと【とある事】を思い出した。
「……そういや母上にはとっくの昔にバレてたっけ」
「――は?」
「でも、ちゃーんと内緒にしてくれるって約束してくれたから問題無いよなっ」
「――ちょっと待て! このど阿呆っ、今何と言った!?」
のほほんと笑うルークとは反対に、アッシュの顔色は目にも留まらぬ速さで悪くなっていく。
「へ? あれ? 母上にバレたって言ってなかったっけ?」
「初耳だっ! てめぇはそういう迅速に報告すべき事項を何でナチュラルに言い忘れたりできる!?」
「そんな怒んなって。言ってたつもりになってただけだろ」
「そ・れ・が・駄目だと言ってるんだ!」
「えー、何でだよ。めんどくせーなぁ」
「……テメェだって、ともすりゃ誰かに仕える事になるかもしれねぇんだぞ? そこで、めんどくせーから報告しませんでしたなんて言ってみろ」
「どうなるんだ?」
素直に疑問をもらしたルークに、その直後こそ「聞くまでもねぇだろ」と言いたげに不満顔をさらしたアッシュだったが。
「即刻クビに決まってるだろうが!!」
幼少よりルークに世話を焼くうちに開花した面倒見の良さを発揮し、キッチリと答えを返したのだった。
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