TOA1

□再会は最悪
1ページ/9ページ





「真昼間っからこんな所で昼寝だなんて、アンタよっぽど暇なんだね」


 突然頭上から降ってきた声に動揺を見せることもなく、アッシュは声の主の姿を確認する。声から誰なのか判っていたが、本当に本人だという確証がなかったのだ。しかしそこには思っていた通りの人物――数年前に最年少で教団の最高指導者になった少年の姿。何故か、必ず傍についていなければならないはずの導師守護役の姿は無い。


「…………導師イオン?」


 この場所は導師なんていう高い地位の人間が来るような場所ではないし、アッシュしか知らないハズのお昼寝スポット。しかも目の前にいる人物は容姿も服装もまるまる導師イオンなのだが、なんだか言葉遣いがいつもと違っている。いつもと言ってもアッシュは導師と直接話しができるほどの地位があるわけではないから無論、遠目に見たり伝え聞いたりした彼の姿と比較してという事になるが。

 ちなみに彼がこれまで目撃した導師イオンは、誰に対してもですます丁寧口調で対応する上に物腰が柔らかく、争いを好まない温厚な人物。決して面と向かって皮肉を投げかけて来たり、偉そうに物を言ってくるようなイヤミさんでは無かった。



 故に疑問系。



 そういえばダアトにやって来てから世話をしてくれている人物が、世の中には自分にそっくりな人間が3人位はいるそうですよと言っていたから、もしかすると実は導師は双子とか三つ子でしたとかいうオチがあったりするのか? んで、いま俺の前にいるのは導師イオンの兄弟だったりするとか?

 普段とのあまりの違いにそんな事を思ったのは秘密。

「ま、サボり場所としてココを選ぶセンスは認めてあげなくも無いけど」

 しかし肝心の導師様はアッシュの呟きなどものともせず、自分の言いたいことだけ口になさった。まさにゴーイングマイウェイ。地位の高い人間ならではのワンマンショー状態。しかしながらアッシュはこんな人物の対応には不覚ながらも慣れていたので――昔の知り合いにこんなタイプの人間が何人かいたのだ――答えが返って来るのは諦めた。性格違ってようがもうコイツ導師でいーじゃん。まさか教団の本部があるこのダアトで導師のコスプレするよーな酔狂なヤツがいるわけねーし。




.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ