TOA1
□ご主人様探して三千里?
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アリエッタはご機嫌だった。
ここ最近、六神将の仕事が殊のほか忙しかった事に罪悪感でも感じたのか――六神将の半数は子供と言ってもいい年齢の者で占められているから気づかいの一種なのかもしれないが――ヴァンが唐突に休みをくれた。
いまはちょうど、ここ一年ほど顔を見ることの無かった母親との再会をすませて現在の居住地であるダアトに帰ってきたところ。ライガクイーンはその強面に似合わず礼節を重んじる獣のようで、現在アリエッタは「お友達へのお土産に」と、たくさん持たされた果物やら木の実やら肉やら鉱石やらを選別している真っ最中だった。彼女としては選別する必要性を感じていなかったのだが、以前それをしなかったことで悲しい思いをした事があるので、選別するその手には知らず知らず力がこもっていたりする。
ちなみにアリエッタに悲しい思いをさせた不届き者にはキッチリとライガの鉄槌が下ったことは言うまでも無い。
「えと……シンクにはとっておきで、アッシュの分はキノコ抜かないと、です。リグレットにはお料理できそうなのを全部……ラルゴは果物……ディストには石……ヴァン総長には――」
その時、コロリと麻袋から何か蒼くて丸い毛玉が転がり出た。
「ママのお土産にこんなの、あった?」
「ガルゥ……」
アリエッタの問いに、兄貴分のライガも心当たりが無いようで首を横に振る。とりあえずちょんっと触れてみると、なんだかふかふかしていて「みゅぅみゅぅ」と寝息が聞こえてきた。
「生きてる? ということはこれ獲物じゃない……よね?」
じゃあコレなに?
アリエッタとライガが困惑してオロオロとしていると、毛玉がぶるんと震えてにょきっと二本のふかふかの耳が飛び出たかと思うと、ぴょんっと可愛らしく飛び起きた。
「みゅう、ここはドコですの?」
そして人間の言葉を発したのだった。
「……ちーぐる?」
「……ガル?」
それはある日の昼下がりの出来事。
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